シシィなんか可愛くない!

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母は猫のひいきをする。いつも
「サンジは可愛い。シシィは可愛くない!」
と言う。
先住猫のサンジに気をつかって、味方をしてあげようというのか。それとも、子猫のころ暴れん坊すぎたシシィをちょっぴり憎たらしく思っているのか。何度もなんども口癖のように母は言う。
「シシィはちっとも可愛くない!」
でも、その目はいたずらっぽく笑っている。口元もほころんでいる。小さな子供をからかうような口ぶりで
「だって、愛想ないし。いばってるし。ドアも自分で開けられへんし。2階から落ちるし、トイレにはハマるし! ちっとも可愛くないんだもん」
・・・天の邪鬼だなあ。

当のシシィは知らん顔だ。何を言われようがどこ吹く風。「可愛くない」っていわれても、そんなのちっとも気にしない。嘘だとわかっているのだろう。

「あたしはおかーさんが好きなんだもん!」
シシィは母の腕にするりと入っていく。

「こら! どきなさい!」
口先だけの意地悪でシシィを追い払おうとする一方、母の手はしっかりとモフモフを抱きしめている。そうっと背中をなでている。シシィはごろごろと喉を鳴らす。
・・・これでも可愛くないの?
ふふ、と母はいたずらっぽく笑う。
「うーん、ちょびっと! ちょびっとだけ可愛い。ちょびっとだけね!」
いいかげん認めなさいよ、ほんとは可愛くてしょうがないくせに。

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