母70才、ゾンビを撃退。ハロウィンを満喫する

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ハロウィンをやたら楽しみにしている母。
毎年毎年
「ゾンビになりたい!」
とうるさいので、今年は百均でこんなものを買いました。


(ゾンビマスク、血糊、傷口シール、ドクロ杖)

それからイオンで安くなってたカボチャの被り物も。


(これは可愛い)

買ってはみたけど…

所詮、70才の要介護だ。高齢者にはハロウィン・パーティやってくれる友達なんていないのである。デイサービスのお年寄りはハロウィンなんて言葉すら知らないし、友人や実の妹にも
「ええー、ハロパ!?」
「何がいいの、お化けなんて気持ち悪い」
正直、ドン引きされている。まあそれが普通なのだろう。

だからといって家の中で仮装したってつまらない!

ということで。
今年は思い切って、母を連れていくことにした。
大人でもハロウィンに参加できる場所へ。

USJだー!

午後2時に到着して2時半からのパレードを見た。壮絶な人混みと爆音にタジタジとなる私たち。だがお目当ての「ホラーナイト」は6時からだ。すぐに「しんどい」「お尻痛い」と言い出す母が、6時まで頑張れるだろうか?

「頑張るもん!」
と母は言う。
「楽しいから絶対に大丈夫!」
よし、約束したな!
6時までに『帰る』って行ったら罰金1万円だ!
「じゃあ、6時までがんばれたら、賞金3万円」
・・・えええ・・・負けたらどうしよう。

こうして私達の『賭け』が始まった。

USJはもちろんたくさんのアトラクションを楽しめる遊園地だが、車椅子の母にとっては雰囲を味わう場所だ(だって乗り物のれないもん)。ぐるっと一周してからハリーポッター・エリアへ向かう。パレードの直後ということもあり、凄い人混みで、思った方向へ歩くのが難しいくらいだった。

ハロウィンだから、遊びにくる客の多くが仮装している。ゾンビやミニオンやスパイダーマン。ハリーポッターにスーパーマリオ、ドラキュラにパンダに子泣きじじい、血まみれの花嫁、お色気ナース。まともな服装の人のほうが少ないんじゃないだろうか。本気のコスプレイヤーも多くいて、さながらコスプレ大会だが、ハリーポッター・エリアは異形の人たちがしっくり来る場所だった。

『三本の箒』で遅すぎるランチを食べ、ゆっくりと英気を養う。そのあと、蛙チョコレートを買ったり、スタッフのお兄さんに魔法の杖の使い方を教えてもらったりして楽しんだ。


(杖の振り方と呪文を教えてくれるコーナー。安物の杖では魔法は成功しませんでした…)

そうして待つこと3時間。

夢の国に日が暮れる。

お待ちかね、夕方6時から始まる「ハロウィン・ホラーナイト」は、USJの敷地内にゾンビがわらわら現れて、客を襲う、というイベントだ。

刺激が強いのか、こんな看板が立っていた。

このエリアの体験により症状の悪化する症状をお持ちの方、以下に該当する方は利用できません・・・心臓疾患、めまい、体調不良・・・「血圧異常」

アカンやん、母。

まあいいか。

6時を回ると、おどろおどろしいゾンビに扮したパフォーマーが随所に現れて、「ギャー!」「ウアァ!」「オオオオ!」てな具合で観客たちを脅かし始めた。

ふと辺りを見渡すと、私達以外、全員が若者だった。この時点のUSJの平均年齢は25才くらいじゃない? もう本当に若い子しかいないの! 車椅子ユーザーもいたけどやっぱり若者だった。

若い女の子たちがゾンビに追いかけられたら、そりゃもう、キャーキャーと逃げ惑う。怖がる。叫ぶ。

本当に怖いかどうかはともかく、血を滴らせたゾンビが背後からウワッ!と襲いかかってきたら誰でもびっくりする。すごい人混みだし、びっくりして後ろも見ずに走り出すもんだから、みんな車椅子にガンガンぶち当たってくる。母は平気な顔をしていたけど、ぶつかった人は痛かっただろうなあ。

優しいゾンビさんたちは車椅子のおばあちゃんにも絡んで下さいました。で、ゾンビがウワッと襲いかかってきたとき、母はどうしたかというと…

母は杖でゾンビを追っ払ってた。


(しまった、フラッシュ光ってた。ごめんなさい)

「さっきハリーポッターの所で呪文を教えてもらったから!」

って、一生懸命に杖を振ってるんだけど、ゾンビには呪文きかないと思う!しかもその杖、ドクロのやつだし!(頭にはカボチャ被ってるし!)

ゾンビさんたちも車椅子のおばあちゃんに噛み付くわけにもいかないから(てんかん発作でも起こされたらゾンビより怖い!)、すぐ逃げてしまうので、母は

「私はゾンビより怖いんだから!」

と超ゴキゲンだった。

百均の仮装グッズはどれも役に立たなかった(シールは貼れなかったし血糊は肌荒れしたからやめた)のだけど、ドクロの杖だけは使ってもらえた。

結局、USJを出たのは7時だった。そういえば私たちは賭けをしていて、母が6時までがんばれたら私が3万円払うはずだった。母は「しんどい」とか「帰りたい」とか「お尻が痛い」とか、一言も愚痴らなかった。ゾンビに会えたのが嬉しくて、楽しくて、それどころじゃなかったのだ。
「あんたも車の運転を頑張ったから、3万円はチャラにしてあげるわ!」
あ、ありがとう…。
「ウィーンに負けないくらい楽しかったね!」
えええ・・・それはちょっと・・・
ウィーンが軽くなるからやめて・・・。

なんにしろ楽しくて、良かった良かった。
70才でも、車椅子の要介護でも、ハロウィンは楽しんでいいのだ。