母と一緒にもう一度

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片麻痺の母と2人で1挺のバイオリンを弾く「2人バイオリン」。
正月休みに練習していた。
近頃は「ユーモレスク」と「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」を練習してたんだけど、アイネクは私にはちょっと難しすぎた。
モーツァルトって難しいんだ。
気分転換に違う曲も弾こうと思った。
「どれを弾こう?」
古い楽譜をぺらぺらとめくる。
2,3冊めくった時、その曲に出会った。
「これだ!ザイツの5番!」

ザイツは初心者用の協奏曲をたくさん作った音楽家だ。
一般的ではないけれど、バイオリンを習った人はみんなお世話になっている。
とくに私は・・・私たちは。

母はバイオリン教師で、近所の子供を家に集めて教えていた。
私はその音を聞きながら育った。
いや、聞いたという意識さえない。
子供のバイオリンの音は生まれる前から私の生活に流れていて、車の音とか雀の鳴き声くらいにありふれた音だった。
部屋にいても外で遊んでいても(暖かい時期は)聞こえていた。

生徒はみんな友だちだから、音を聞けば誰が弾いているのかわかった。
Rちゃんは慎重だからしっかり弾く。
Yちゃんは適当にカチャカチャっと弾き走る。
同じところでいつも間違えて、練習していないことがバレるのはH君だ。
3時頃になると音が止み、
「おやつですよ!」
と母が呼ぶ。
わーっと集まってみんないっしょにお菓子を食べる。
食べ終わってからもぺちゃくちゃ喋っていると、
「次はMちゃんの番だよ、早く松脂ぬってきなさい」
と母が急かす。

ザイツの協奏曲は、バイオリンを始めたばかりの子供にとって最初のチャレンジ曲かもしれない。
年上の子が発表会で弾くのを眺めながら
「あの曲かっこいいなあ」
と思ったことを覚えている。
難しくはないけれど、勇壮で、ちょっと豪華でキラキラしてる。
自分で弾けるようになったときは得意だった。
ザイツの5番はそんな曲だ。

「よし、これを弾こう」

なつかしい曲。
子供の頃に何百回、何千回と聞いたであろう曲。
母に教えてもらって弾いた曲を、40年経った今もう一度、母と共に弾こう。
皆さんにもいつか聞いていただけたらいいな。

本日の猫写真。

ぺろりん

最近シシィが甘えたモードです。

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