折れない母

昨日まで夏だったのに、今日は一気に冷え込んだ。
空の色も雲の形も秋模様だ。
食欲の秋。
そして芸術の秋！

ということで、母を地元のクラシックコンサートに連れていくことにした。
コロナが落ち着いてる今なら大丈夫だろう。
「きれいなお洋服を着ていかないとね。お化粧もしなくちゃ」
母はうきうきと言う。
「お化粧するの久しぶりだねー！」
どうせマスクで隠れるけどねー。

こんな華やいだ場所、なんて久しぶりなんだろう！
お客さんは３分の１ほどしか入れていなかったが、それでも何人もの知人に出会い、
「あら、お久しぶりです」
「高畑先生、お元気でした？」
とお声をかけていただいた。
マスクで顔が見えないもんだから、母はだいたい
「誰だっけ」
てな顔をしていたけれど。

帰宅して長いことかかって母はブログを書いていた。

「いつの日かまた私も（バイオリンを）弾ける日が来るのでしょうか」

って書いてるから、
「無理じゃない？もう普通に引退するトシでしょー」
とにべもなく言ってやった。
無駄に夢をみてもしんどいだろうと思って。

ところが母には逆効果。

「くやしいーーー！
いつか、あんたを見返してやるんだから！
一人で弾けるようになって、ぎゃふんと言わせてやるんだから！
それが私の生き甲斐！」

大笑いしながら言ってのけた。
母はほんまに折れない人だ。
鋼の夢見る少女だなあ。
「はいはい、ぎゃふんぎゃふん」
と答えなら私は熱いコーヒーを淹れた。

今夜はお鍋が恋しいくらい冷え込んできましたね。
皆様、コロナだけじゃなく風邪にもお気をつけて！