利用者Tさんの家は大きい。
訪問介護サービスは、まずTさんの所在を探すことから始まる。
「おはようございまーす!」
と声をかけると
「はあーい!」
返事は聞こえてくる。
だが姿はない。
台所にもいないし寝室にもいない。
トイレもいないみたい。
まさかお風呂じゃないよな。
「Tさん、どこですかー!?」
「ここでーす!」
Tさんの声にまじって、かすかに音楽が聞こえてくる。
和室でテレビを見ているのだな、と思ってふすまを開くと、
・・・Tさんが踊っていた。
♪ 小原庄助さん
♪ 朝寝朝酒朝湯が大好きで
♪ それで身上潰した
会津磐梯山を踊っていた。
民謡のDVDをかけて一緒に踊っていた。
Tさんは百才近い要介護者である。
頭脳こそ明晰だが、内蔵はボロボロだし歩くのにも杖がいる。
少し動くと息切れがするはずだ。
なのに踊っている!
びっくりしてポカンと眺めているうちに一曲終わった。
「えへへへ、恥ずかしいところを見られてもうた」
Tさんは照れくさそうに笑った。
息を切らせながらソファにどすんと座り込み、こんなことを言った。
「今ね、これを踊ろうと勉強しとるんです。若い頃から踊りは踊ったことがない。せっかくだから始めてみようかと思ってDVDを買いました」
・・・えっと、お体は大丈夫ですか?
「そら、しんどいですよ。しんどいけど、やりたいもん!」
Tさんは豪快に笑う。
「年寄りがアホなことして、と思われるかもしれませんな。私は若い頃からずーっとアホでしたから、死ぬまでアホでおりたいんです。
いつ死ぬかは神様が決めること。死んだらどうしようもないけど、幸いまだ生きておる。生きてるあいだはギリギリまで楽しみたい。アホだからそう思うんですよ。トシとったからいうて賢くなったり、死に近づいたからいうて悟りを開いたりしませんよ!」
Tさんの趣味は学ぶこと。
新しいことを学ぶこと。
アニメ『鬼滅の刃』を好きだといった90代である。
「新しいことを知るというのは、一番楽しいことなんです」
私もこんなふうに笑える高齢者になりたいと思った。
さて。
本日の猫写真。
帰宅したらサンジが熱中症になっていた。
またもや脱走して庭に出ていたのを捕まえたところ、ハアハアと犬みたいに口呼吸しているではないか。
これはやばい!
どう見ても熱中症だ!
「ほら、お水飲んで飲んで~」
と冷やしまくったら、幸いすぐに回復した。
ちょっとドキドキした。
コメント
こんばんは
「動物のお医者さん」で熱中症の犬を洗濯機に水を張った中で冷やしたシーンを思い出しました。
サンジくん、無事に冷やして貰えて良かった…。
毛皮を着て外に出る悟らない男猫ニャ。
こちらの肝が冷えます🧊
おお、『動物のお医者さん』懐かしいですね!
サンジはエアコンの効いた室内の床で冷やしただけです。
保冷剤は嫌がられちゃったー。
サンジもオヤジも、悟らなくてもいいから学習してほしいですね。