『おでかけは最高のリハビリ!』なんて本を書いておいて無責任な話だが、要介護のひとたちは簡単におでかけなんかできない。体調が悪かったり家族がいなかったり施設暮らしだったりすると、すぐそこのコンビニに行くことすら叶わない。
私が訪問介護に出向く先にはそういう方が多い。
ずーっと家の中で過ごす人たち。
「それでもなんとか前向きに生きようと思うの」
健気にほほえむその方に、私は
「じゃあ一緒に歌を歌ってみませんか」
ともちかけた。
歌には不思議な力がある、と教えられたのはデイサービスでのこと。認知症でなにもかも忘れてしまった方でも、歌だけは忘れることがない、それどころか新しい歌を覚えることさえあるのだ。
歌を歌うことで脳は活性化するのかもしれない。
そう思って、訪問ヘルパーの仕事先でもちょいちょい歌ってみることにした。
最初に歌ったのは超高齢の方で、普段はあまりおしゃべりできない方なのだが、私が『故郷』や『紅葉』を歌ってみると、一緒に歌ってくださった。
♪ うさぎおいし かの山
♪ こぶな釣りし かの川
と。
「えええ、ばあさん、歌えるんか!」
家族さんがびっくりしておられた。
別の利用者さんには言語障害があった。しゃべるのはしんどい、言葉が出てこないから、とおっしゃるが、ふとした雑談がきっかけて若い頃は詩吟が得意だったと知った。
「ぜひ聞かせてください!」
お願いすると見事な『川中島』を披露してくださった。
これがまあ!
なんとまあ朗々と!
なんとまあ息も長く続くこと!
「まるで別人じゃないですか!」
これ絶対、リハビリにいいよ!
「・・・なんとか前向きに生きようと思うの」
健気にそう仰った方に、一緒に歌いましょうともちかけると
「ほんとう!?やったあ!」
びっくりするほど喜ばれた。
「でも私、歌詞を知らないの。こんど持って来てくれない?」
どんな曲がいいですか。
童謡ですか。歌謡曲ですか。それともシャンソンですか。
「明るい歌がいいな」
わかりました。次回、歌詞カード持ってきますから、一緒に歌いましょうね。
「歌なら一人で歌えるわね。落ちこんだときも楽しくなれそう。来週、必ず持ってきてね。絶対よ。楽しみにしてるから!」
歌を歌えば元気になる。
幸せな気持ちになって
心が健康になって
そうすれば身体もちょっとずつ元気になれる。
ちょっとずつ前を向ける。
そう信じて。
・・・さあ、何の曲を歌おうかな?
本日の猫写真。
私がシシィと遊んでいると、必ずじーっと見つめてくるサンジ君。こんな顔してますがジェラシィがメラメラなのです。