リモコンがない！

昼食時。
テレビのチャンネルを変えようとしたら、いつもの場所にリモコンがない。
「どこにやった？」
オヤジに聞いても首をかしげている。
朝から晩までテレビを独占しているのはオヤジである。
NHKからサンテレビに替えたのもオヤジである。
だからオヤジがリモコンをどこかにやったに違いないのだが…
「知らん」

知らん、じゃないよ。
リモコンがないと困るじゃないか。
昼ごはんの間ずっと暴れん坊将軍を見ていなくちゃいけないのか。
いや暴れん坊将軍はキライじゃないけどもそういう問題じゃないんだよ。
「だって俺は知らんもん」
探してやー。

だがリモコンは見つからない。
リビングは狭いし物だらけってほどじゃないのに見つからない。
私が探しても見つからない。
おかしいなあ。

そういえば去年も同じようなことがあった。
そのときは一ヶ月くらいそのままで、大掃除をしてソファの下から発見されるまで、一ヶ月間NHKしか見られなかった。
今回もそうなるのだろうか。
一ヶ月くらい・・・
サンテレビしか見られないのだろうか・・・
サンテレビしか・・・
いくらなんでもキツすぎる。
いや、おっさんテレビもキライじゃないけどそういう問題じゃないんだよ。

オヤジはこういう時、たいてい人任せにしてしまう。
なにか困ったことが起きてもすぐ
「誰かがなんとかしてくれるだろう」
と考える習慣があるらしく、人に探させておいて自分はボーっと座って眺めてる。

それが腹立たしいので私は探すのをやめた。
「自分で探してや！」
と言い放っておいた。
だって私は仕事に行かなくちゃいけなかったし。

帰宅するとオヤジはサンテレビを見つめてぼーっとしていた。
「リモコンは？」
「いや・・・？」
怪訝そうにオヤジは答えた。
なんだ、おまえが探してくれるんじゃないのか、とでもいうように。
「自分で探してや！」
私はもう一度いって母の用事をしにいった。

オヤジはしばらくサンテレビを離れなかったが、とうとうチャンネルを替えたくなったらしい。ようやくゴソゴソを動き始めた。

それからしばらくして、
「あったーー！」
久しぶりにオヤジが大きな声を出した。
「リモコン見つかったー！」
どこにあったの？
「ゴミ箱・・・」
何かと間違えてゴミ箱に捨てて、そのあと普通にゴミをぼんぼん捨てたので埋もれていたらしい。

まあ見つかってよかった、よかった。
リモコンを手にしたオヤジは嬉しそうにカチャカチャ回していた。
が、結局またサンテレビを見始めた。
こんどは水戸黄門である。
・・・よっぽどサンテレビが好きなんだな。