妹の顔がエライことに

スポンサーリンク

朝から車をとばして妹に会いにいく。
身体障害者施設に入所している妹だ。
3日前に親知らずを抜き、顔がかなり腫れてしまったという。

「驚かないでくださいね」
と前置きされていたが、
「わっ!」
普通に驚いた。
顔の右半分がぶよぶよと腫れあがり、目のまわりは真っ赤で歌舞伎の隈取のよう。全体的には、黄・黒・青・白・赤、とカラフルに腫れているので派手な京劇メイクだろうか。
「これでもマシになったんですよ~」
と、担当の職員さんが笑って教えてくれた。「一昨日までは鼻がわからないくらいだったし、昨日は目もあんまり開けられなかったんです。写真みます?」
・・・ボコボコに殴られた感じですね。
「でしょー。でも今日はちゃんと目もみえてるし口も開いてゴハンが食べられるようになったんですよ!」
・・・そんなに酷かったのか。痛かっただろうな。仕事のあとでも夜でもすぐに様子をみにくるべきだった。ごめんな。

呆然としていると
「だだーだだーだだー!」
妹は大声で私を呼んだ。
「あんねえ、あんねえ、きのう、きのう、きのう」
昨日?
あ、昨日よりマシってこと?
「うん!」
妹はにっこり笑った。
昨日よりはマシになってるから。大丈夫だから。心配しないで。多分そう言ってるんだろう。
妹は重度の知的障害もあるが、精神的には十分に大人だ。
「CTも撮ったんですけど、すごく大人しくされていましたよ。20分くらいかかるかもって言われてたのに、すぐに終わりました」
と職員さんは教えてくれた。重い脳性麻痺のある人にとって、静かに検査を受けるのは、かなり難しいことだ。不随随意運動・・・体が勝手に動いてしまうから。
「それに点滴も、長い時間、腕をぴーんとだして頑張ったんですよ、ね!」
「ねー!」
妹と職員さんは得意げにほほえみを交わした。息がピッタリあっている。妹は職員さんのことが大好きだし、よく可愛がってもらっているのだと、しみじみと伝わってきた。本当に良い施設にお世話になっているのだと感謝した。

「すごいね、えらいね、点滴を2回も抜こうとしたお父さんとはエライ違いだね!」
私は妹をいっぱい褒めておいた。
「おかあさんに会いたい」
妹はちょっとだけ寂しそうに言った。でも、今日も通院しなくちゃいけない。まだ家には帰れない。だからそれ以上ワガママは言わなかった。
・・・来週、腫れが治ったら、家に帰ろうね。お父さんとカラオケして、お母さんと『ふしぎ発見!』を見て、私と一緒にコーヒーを飲もう。お刺身いっぱい買っておくね。
「うん」
妹は嬉しそうに微笑んだ。

腫れが治まったら。
病気が治ったら。
コロナウィルスが収束したら。
いっぱい遊ぼう。
外に出よう。
想像しよう。
楽しいことを。

本日の猫写真。

あんまり邪魔ばっかりするので叱ったら、すねて下りてこなくなったシシィさん。