荒れ放題の我が家の庭も、雨上がりの朝だけは美しくみえる。まるで魔法がかけられたかのように。
世界はこんなにも美しい。
・・・だが!
一歩、家へ入れば。
私は怒っているのである!
オヤジに怒っているのである!
オヤジは心房細動のため、カテーテル治療をしてもらい、昨日、退院してきたばかり。
喫煙は心房細動を誘発するから、
「絶対にタバコはやめるように」
と担当医には言われ、親戚のおばさんにも
「タバコ吸ったら死ぬで!」
と脅されていた。
にもかかわらず。
今日、すでに吸っていた。
退院翌日にもう吸った。
せっかくの手術が台無しだ。
あまりに酷くてちょっと笑えた。
怒るのはエネルギーの無駄づかいだ。
怒りとは、理想と現実とのギャップが生じたとき「自分の思い通りにならない」と思うことだ。そして現実には、他人というものは絶対に自分の思い通りにならない。ギャップが生じて当然である。いちいち怒っていたら身が持たない。
怒るなんて無益なことなのだ。
・・・そう言われたんだけど。
くわえタバコでぼんやりして火事寸前とか、毎晩失禁するのに「面倒だから」リハパンはかないとか、そのせいで毎晩大洪水とか、それでもシャワーを嫌がるとか。私にはちょっと容認できない。
「うるさい!ガミガミ言うな!」
とオヤジは怒るが、私は私の生活を守らなければならない。
この家と母を守らなければならない。
そう思うとやっぱり怒ってしまうのだ。
前に習ったアンガーマネジメントを思い出し、6秒間こらえてみたけど、ぜんっぜん効かない。
その場を離れるっていう選択肢もあったけど、その場を離れたらたぶん火事になってたし、すぐに掃除しなかったらフローリングのシミと尿臭は取れなくなっていただろう。
怒らないで生きていくことは、とっても難しい。
この世界は美しい。
でも、ときどき、疲れちゃうんだよ。
そして、どうしようもなく旅が恋しくなるんだよ。
ごめんな、サンジ。