近頃、ゾンビのようになってしまったオヤジ。
何事にも関心を示さず、口もきかず、一日中ぼーっとテレビだけを見て過ごしている。
生活不活発病からくるうつ症状だろうと、私は勝手に思っていたが、伯母(オヤジの姉)が
「なんでこないなったん!?」
と問い詰めたとき、オヤジはポツリとこう言った。
「もう水を飲むのが嫌で・・・」
オヤジがサラリーマン生活最後の健康診断に引っかかったのは初夏のこと。
心房細動だと診断され、すぐに
「カテーテル手術をしましょう」
と決まった。
カテーテルはありふれた治療で、入院も数日ですむらしい。
だが、オヤジには一つ問題がある。
腎臓の数値が悪いのだ。医師に
「このままだとカテーテルを入れられない。水をたくさん飲むように!」
と言い渡された。
「1日2リットル飲みなさい」
オヤジは言う。頑張って飲み始めたけれど2リットルなんてまるで無理。もう、毎日苦痛で仕方ないのだと。
考えてもみてほしい。一日中ぼーっとテレビ見てるだけの生活だ。冷房のきいた部屋でまったく動かない。しゃべらない。汗もかかない。それで喉が乾くわけがない。飲めるわけがない。
一日中、水を飲むことばかりを考えて、トイレばっかり行ってるうちに、だんだん凹んできて、何をする気力もなくなって、ゾンビになっちゃったのだと。
・・・いや、動けよ! 何かして気を紛らせろよ! そしたら水も飲めるよ!
結局はやっぱり生活不活発病なのだと思う。韓国ドラマの見すぎだと思う。ものすごく残念だけど、現在、AmazonFireは取り外している。
実はこのあいだから、追い詰めるのはよくないかもと思い、私はオヤジに「水を飲め」と言うのをやめていた。そしたら1日500mlくらいしか飲まないのだ。医者に言われている量の、たった4分の1! これじゃあ、やいやい言うしかないではないか?
「何グジャグジャいうてんねん、とにかく水飲みー!」
伯母さんが叱りとばした。
オヤジは燃えカスみたいな苦笑いを浮かべてた。
「腎臓の数値が悪いままだと、カテーテルが入れられへん。そうなったら胸開いて手術するしかない。大事やで。お金もかかるで。しんどいのはわかるけど、とにかく今は水飲みー!」
それでもやっぱりオヤジは飲まない。
入院は明後日。
手術は3日後の予定ですが、この調子だと手術できないかもしれないなあ・・・。
水分補給が下手なのはトシのせいもあるだろうけど、うちは両親そろって若い頃からあんまり飲まない方なんです。水分=コーヒーくらいに思っている。私も妹もお茶めっちゃ飲むのに。なんででしょうね・・・。