ずっとオヤジが家にいる

よく、猫はツンデレだとか、いうことをきかないとか、呼んでも来ないとか、言われるけどさ。

うちの猫は呼んだらすぐ来る。
10秒以内に来る。
シシィーおいでー！
「にゃにゃっ！」
別の部屋で眠っていても走って参上。エサ皿の前に正座して
「何をくれるの？」
という顔をする。
・・・いや、呼んだだけ。せっかくだから爪切りでもしようか。
抱き上げると
「爪切りは嫌ニャ！」
暴れて抵抗する。
が、それも一瞬だ。
・・・いい子にしてたら、ちゅーるあげる。
「ちゅーる！！！！」
魔法の一言でピタッとおさまる。ウソみたいにおとなしく爪を切らせてくれる。まことに扱いやすい。
猫の機嫌をとるのは簡単だ。

終わりかけの紫陽花

むしろ、いうことをきかなくて呼んでもこなくて扱いにくいのは人間のほうである。
うちのオヤジである。

オヤジは先月で定年になった。行く場所がないから家にいる。
ずっと家にいる。
ずっと『水戸黄門』みてる。
困る。
だいぶ困る。
私がテレビを見られない。

お金がないお金がないと言ってるくせにタバコをやめないし、そのうえ毎日、昼ごはんに弁当だの寿司だの買ってくる。
「お昼ごはんつくったろか？昨日の残りとかあるし。冷凍食品のストックもあるから温めればいいよ」
ともちかけると断られた。
・・・残り物なんか食べたくないそうである。冷凍食品を温めるのは面倒くさいそうである。昼ごはんくらいは外食したいんだそうである。インスタントラーメンならときどき作ってるようだけど、汁まで飲むから体に悪い。何を言っても聞く耳もたないのがオヤジという生き物である。

私としてはもう
「このままだと糖尿病の生活不活発病になるよ！筋肉がおちて歩けなくなってトイレ行けなくるけどリハパンどれがいい？ライフリー？エリエール？」
とか言ってやることしかできない。オヤジのオムツ交換は面倒くさそうだなあ。

真面目に考えるとイライラするから「オヤジは持病もあるから動きづらいんだろう」とあきらめることにして、今は一日に１つか２つだけ用事を頼むようにしている。３つは無理。覚えられないから。