デイサービスのお悩み相談

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デイサービスの午後。
昼食の後はおしゃべりの時間だ。車座になった利用者さんたちが思い思いに昔話をしたり、噂話に興じる。

愚痴や相談事がでてくるのもこの時間だ。
一人の利用者さんが
「私、ボケたかもわからん」
と不安そうに訴えた。『かも』も何も、もう何年も前から認知症なのだが
「最近、物忘れがひどくってなあ」
・・・さあ、どう紛らわそうか、と考えていると。
周りの利用者さんたちが口々に言った。
「何いってんのあんた、ボケてんのはみんな同じやで」
「そうそう、みんなボケてる!」
「ここにいる全員ボケてる!」
「ボッケボケやあ!」
「だから平気!」
相談してきた利用者さんは楽しそうに笑った。
「みんな同じかあ、そっかあ」
「そうよ。ボケててもいいのよ」
「いいの、いいの」
「みんなでボケれば怖くない!」
そしてみんなでどっと笑う。
私は「ほえー」となって聞いていた。

「ほえー」ってなってる私

次に別の利用者さんが
「最近、娘が私の部屋に入ってゴソゴソやってるの。ネックレスを盗むのよ」
と訴えた。認知症にありがちな『もの盗られ妄想』である。他人に「そんなことあるわけないよ」と諭されても絶対に納得しない。が、うちのデイサービスの人たちはそんな諭し方をしなかった。
「あんたの娘やろ? なら、あんたがそんなふうに育てたんやん」
「そやそや、育てたふうに育つんや。自分のせいや」
「むしろ娘でよかったやん」
「泥棒じゃなくてよかったやん」
「ネックレスくらい、あげとき、あげとき」
「あんたが死んだらどうせ娘んさんとこ行くんやし」
そしてまたみんなでどっと笑う。相談した利用者さんは「そうね」と笑い、
「あんなネックレスくらい、べつにいらないんだけどね」
と言った。私はまた「ほえー」となって聞いていた。

こういう会話ができることが、デイサービスの大事な役割なんだろうなあと思う。