キャット・セラピー

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急にお腹が痛くなった。私は胃腸が弱くてお腹をこわしたり胃が痛くなることがときどきある。薬をもらうほどではないが、ちょっとしんどい。今日は幸運なことに長めの昼休みがとれたので、家に帰って横になっていた。

すると
「帰ってたのーーー!」
喜んだのは猫である。昼間に家でゆっくりすることなんてまずないから、遊んでもらえると思ったらしい。次々におもちゃを持ってきて
「あそぼう!」
と誘ってきた。
・・・ごめんね。調子わるいねん。

「そうなの」
シシィは賢い猫である。すぐにあきらめて寝そべった。私にぺたんとくっついて。
「♪ゴロゴロゴロゴロ…」
静かにのどを鳴らし始めた。
気持ちよさそうに目をつぶり。
ピンクの肉球を私の足にくっつけて。
楽しそうな猫の歌を歌ってくれた。
「大丈夫だよ。怖いことなんか、なーんにもないよ。あたしがそばにいるからね」
とでも言うように。
「♪ゴロゴロゴロゴロ…」

猫がのどを鳴らす音は人間の体にいいのだと聞いたことがある。25ヘルツの低周波が自律神経を整えるとか、幸せホルモンが分泌されるとか? しらんけど。

とにかく、猫といっしょの昼寝のあとはすっかり体調がよくなっていた。お昼ご飯も食べられた。
「シシィ、ありがとう。仕事いってくるね!」
再び出かけようとしたら、シシィは玄関まで追いかけてきた。そして
「行くの?あたしを置いていくの?」
せつなげな目で見送ってくれた。
…ごめんなあ。チュール代、稼いでくるから。

振り切って仕事へいくと。

うちのデイサービスで最長老のおばあちゃんが、立ち止まったままぜんぜん歩けなくなっていた。どうしたのかなと思っていたら、ずーっと猫(ミー先輩)をなでていた。やっぱり猫はゴロゴロいってた。

高齢者は犬猫を飼えない。でも、高齢になればなるほどアニマル・セラピーは必要だと思う。

あっちが痛い、こっちが痛い、と訴えても医者には「年のせいだから、あきらめろ」と言われるし、家族は耳にタコができているので聞いてもくれない。愚痴をこぼしても、同じ話をくりかえしても、犬や猫は寄り添ってくれる。のどを鳴らして歌ってくれる。年を取ればとるほど、無条件で癒やしてくれる相手が必要なのではないだろうか。

ゴロゴロゴロゴロ、ゴロゴロゴロゴロ、ゴロゴロゴロゴロ…

・・・サンジ君のゴロゴロは、ちょっと、うるさいけど。