我が家で一番たいへんなこと

スポンサーリンク

在宅介護していると、よく
「大変ねえ」
と言われる。
「お母様が車椅子で、妹さんまで…!」
いえいえぜんぜん大変じゃありませんよ、と笑って答えても謙遜と受け取られてしまう。

だが本当に、一番大変なのは母でも妹でもないのだ。

要介護の母よりも。
重度障害者の妹よりも。
ついでに2匹の猫よりも。
我が家で一番、大変で、我が家で一番、手がかかるのは・・・オヤジである。

オヤジは恐ろしいほど自己管理能力がない。
「うちの主人だってそうよ」
と言われるかもしれないけどちょっと尋常じゃないレベルだと思う。
以下は100%愚痴になる。

オヤジはわりと最近まで、自分のパンツがどこにあるかも知らなかった。ぜーんぶ誰かにやってもらっていたせいだろう。整理とか掃除とか、生まれてこの方したことがない。一部分だけでいいから片付けてくれと頼むと
「やり方がわからない」
と返ってくる。本当にわからないようなのだ。
「片づけってどうするの?」

お菓子やパンを買ってきては紙袋にほうりこみ、翌日にはそれを忘れてまた買ってくる。これを毎日くりかえす。紙袋は5つ6つと増えてくる。買ってきたものの大半はダメになる。
「認知症じゃない?」
と言われそうだけど、若い頃からなのだ。私が小学生の時から父のかばんにはいつもカビの生えたパンが入っていたし、部屋はゴミ箱みたいな紙袋がいくつも積んであった記憶がある。たぶん、診断を受けたらなんとか障害って名前がつくと思う。

部屋だけではない。自分自身もものすごい。ほうっておくとお風呂も入らないし着替えもしないからだ。何日でも同じパンツを平気ではいている。臭い。
「下着は毎日かえるものだ」
「せめて週3でいいから風呂に入ってくれ」
しつこくしつこくしつこく言ってようやく風呂に入ってくれる。デイサービスでも入浴拒否する利用者さんは珍しくないけど、家族のほうがよっぽど苦労する。これについても
「風呂に入らんのは子供の頃からや」
と伯父さんが言っていた。

もちろん、酒もタバコも止める気がない。ドクター・ストップなんかもう何年も前から出ているのに無視。完全無視。「死んでもええもん」と言っている。

おかげさまでオヤジはたくさん病気をもっている。脳梗塞、狭心症、無呼吸症候群、心房細動、エトセトラ、毎日おびただしい数の薬をのんでいる。でもタバコやめないの。死んでもいいらしいから。

一番困ったところは金銭管理ができないところだ。生まれてから一度も貯金というものをしたことがない、どころか、貯金の意味すらわかっていないようで、
「なんでみんな貯金してるの?」
と、このあいだ聞かれた。

預金通帳は母が握っていたが、母は毎月かなりの大金を「おこづかい」として渡していた。オヤジはそれを残らず博打につぎこみ、1週間で使い果たして、足りなくなると・・・まあ言わずもがなである。母はだいぶ恨んでいる。

博打癖は脳梗塞よりも狭心症よりも厄介な病気である。家計がゴリゴリ削られる! 今現在も削られている。死んだおばあちゃんが晩年
「ごめんな、こんなどうしようもない子で」
と母に謝っていたっけ・・・。おばあちゃんが泣こうが母が嘆こうが私が怒ろうが、やっぱり誰に何を言われても聞く耳をもたない。

誰に何を言われようと。健康を損なおうと。家族に迷惑をかけようと!
自分をつらぬく。
やりたいようにやる。
ある意味、ブレない人だと言える。
ある意味、すごい。すごいアホだと思う。

それでもオヤジはちゃんと働いてくれていた。定年後もフルタイムで働き続けてくれていた(家には5万円だけ入れてくれてた)が、この6月でとうとう退職だ。70歳になる。

病気と年齢のせいで身体はずいぶん弱っている。もともと脳梗塞の後遺症もある。そのうえ
「努力とかキライ」
「しんどいことは、いやだ」
と、散歩など運動になることは死んでもやらない。
家ではずーっと寝そべってテレビを見ている。その番組おもしろいの?と聞くと
「ぜんぜんおもしろくない」
なんで見てるの?
「暇だから」
やばい。暇だからって一日ショップチャンネルを眺めているようでは、じきに廃用症候群になるわ。筋肉が衰えて寝たきりになる。
「そうなんかー」
と言いながらずっと寝そべってる。

本当に、駄目オヤジを絵にしたような人だけど、母(と猫)のことだけは愛してくれている。競輪で勝ったときは紙袋に山盛りのお菓子を母のために買ってくるし、お金がギリギリの時でも
「かあさんにスイカ買ってきた」
と、まだ4月なのにスイカを買ってくる。
どんなに夜遅く帰ってきても、体調がわるくても、母のマッサージだけは欠かさない。ラブラブである。でも近頃では母がしつこく言っても最近はなかなか下着を替えなくなってきた…。

以前は週1でご飯を作ってくれていたが、体力的にしんどくなって、やらなくなった。休みの日は母の朝の支度を手伝う約束だったが、それもやらなくなった。ゴミ出しと洗濯ものの取り込みだけはやってくれているけれど、いつまで続くだろうか。

6月で退職した後はどうするの? と尋ねると

「もちろん、競輪で食っていく! おれはプロになるんだ!」

と言って意気揚々、昨日も出かけていきまして。3万8千円をスッたそうです。我が家の一か月分の食費ですよ。これからも人生はつづくのに。ほんとにどうしたらいいだろう、このオヤジ。

私の癒やしはニャンコだけ

そんなわけで、私のストレスの種、我が家で一番の問題は、介護でも仕事でもなく、オヤジの今後です。家計簿つけててギックリ腰にもなるわけです。

タイトルとURLをコピーしました