高齢者が詐欺師や悪徳業者にカモられる事例

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悪いヤツは信じられないくらい口がうまい。「まさかこんなのに」と思うような話で相手を釣り上げるプロだ。

学生の頃、須磨寺の縁日で、怪しげな山伏が
「これは大変ありがたい御札である!」
と言って、ただの紙切れを1枚5千円で売りつけているのを目撃した。立て板に水とまくしたて、聞き惚れているうちに催眠術をかけられたようになり、ほぼ自動的にお金を払ってしまうのだ。

実は私も買おうとした。だが、財布にお金が全然入っていないことに気づき、ハッと我に返った。まわりを見ると一緒に山伏の話を聞いていた人たち(老若男女10人以上いた)が先を争って御札を買おうとしているではないか。我も我もと万札を掲げながら。
「買っちゃダメですよ!」
私は隣りにいた人の腕を引いた。ふつうの中年のおばちゃんだ。さっきまで節約家だった主婦が、熱にうかされた目をして
「なにいってるの、家族のぶんも買わなくちゃ!5枚ちょうだい!」
と叫んでいた。

・・・こんな話を思い出したのも、認知症の方が、詐欺師や悪徳業者の被害に遭う話を立て続けに耳にしたからだ。若くて元気でもコロッと騙されるのだから、認知症の人はもっとずっと騙しやすいにきまっている。

聞いた話と見た話、よくある話かもしれないけど書いておこうと思う。

1 振り込め詐欺(電話による詐欺)
2 水道業者のボッタクリ
3 訪問販売

1,振り込め詐欺

ブログ『認知症になった夫との日々の記録』に、アワキビさんの認知症のお母様が詐欺被害にあったことが書かれている(「生き馬の目を抜くような世の中だ」)。役所の人間を装って電話をかけてきた犯人に、キャッシュカードと通帳を渡してしまったというもの。犯行の手口が書かれている箇所を抜粋する。

母が役所からの電話だ!と信じた理由。

「緑色の封筒が届いているはずなんですが・・・期限が過ぎてしまっていますよ」
と言われたと。
母は(そういえば、そんな封筒が来ていたかも?)とちょっと探してみると、
あった、あった! 役所から届いた緑色の封筒が・・・
(中略)
確かにこの緑色の封筒のことを言っているのだから、今かかっているのは役所からの電話に違いない!と信じこんでしまった。

そして、母の曖昧な記憶に残っている言葉をつなげると・・・

「お金が戻ってくるんですよ・・・・でも、期限が過ぎてますから・・・・急いで!
銀行名、支店名、口座番号、暗証番号は?
書き換えのためにキャッシュカードが必要です・・・
今、人を遣って訪ねさせていますから、その人に渡してください。」

たった30分くらい、あっという間のできごとだったそうだ。

認知症の方の場合、何が起こったのか理解できていなかったり、忘れてしまったりするから、警察が捜査しようにも、詳細が判明しづらいという。ハンコや通帳、カードは家族が管理したほうが安全なのだけど、取り上げることはとても難しい。

2,水道業者のボッタクリ

一人暮らしの高齢者の話だ。トイレが詰まり、慌てて水道業者を呼んだら、なんと数十万円も請求されたという。正確な相場はわからないが、作業員ひとりで1~2時間、重機もつかわない仕事でその値段はまずボッタクリだろうと思う。

元気な人なら拒否できただろう。びっくりして「ちょっと待ってくれ」と言えただろう。誰かに相談するかもしれない。だがその方は
「どうしていいか分からなかった」
という。
「なんだか、わけが分からなくなった。混乱してしまった」
と。
今すぐ払え!と凄まれてその場でカードを切ってしまったそうだ。高齢者であること、認知症で判断力が鈍っていること、一人暮らしであること。違法かどうかはともかく足元を見られたのだ。

ちゃんとした水道業者を探すのはとてもむずかしい。マグネット広告は危ないと言われているが、ネットだって当てにならない。市に相談したら紹介してくれることもあるが、それでも業者によっては高くとったりするらしい。結局はクチコミが一番なのかな?

3,訪問販売

これも認知症の一人暮らしの方だ。制服の男がやってきて
「大阪ガスです。ガスの点検にきました」
という。
実はこのとき私は現場に居合わせた。ヘルパーとしてお宅にいたのだ。

やってきたのは爽やか好青年だったが、ガスの点検と言いながらどこを点検する様子もなく話し込んでいる声が台所にも聞こえてくる。
「新しい料金プラン」
「今よりもお安く」
「限定キャンペーンは今週末で終わり。今だけなんです!」
あ、これはヤバイ。

やがて
「財布どこやったかいな」
と利用者さんが台所にもどってきたので、私はすぐに
「ダメですよ、あれ怪しいですよ」
と止めた。いや・・・止められるはずだった。ヘルパーと利用者の信頼関係があれば。

でも残念ながら、私はその日、訪問初日だった。信頼関係はほぼゼロだ。
利用者さんは慣れないヘルパーよりも話のうまい男を信じた。それどころか「ヘルパーが仕事中に立ち聞きしている」と咎められた。
「大阪ガスの人やて言うてはるから大丈夫。名刺ももらった。制服も着てるし」
利用者さんは、私に聞こえないよう、男と外に出て話を再開した。

どどどどどうしよう!
事業所に知らせるか?
いや間に合わない、家族さんに電話か?
うわあああ娘さあああああん!

スマホを握りしめて焦っていたそのとき。
奇跡が起こった。
間違いなく今年一番の奇跡が。

たまたま用があったとかで、近所に住む娘さんが訪ねてきたのだ。
「誰、あんた!? 二度と来んといて!」
10秒かからずに男を叩き出した。どうやらインターネット契約を結ばされるところだったらしい。ネット使えないのに。ほんま情けないヘルパーですみません。

猫だって人間を騙します。 「ぼく、ごはんまだ食べてないよ!」 って言います。さっきオヤジにもらったの知ってるよ!

3(訪問販売)の被害に遭いそうになった方は、まだまだしっかりしていらっしゃる方です。計算もできるし会話も普通。携帯電話も使えるし、教えてもらわなければ認知症だと気づかないレベルです。それでも難なく騙された。ほんまに怖いです。
「うちの親はしっかりしてるから大丈夫」
なんか通用しない。相手はプロだから。
皆様もお気をつけて!

コメント

  1. こんばんは~♪

    人を騙して平気な人って、少数ながらもいるんですよね。
    良心の欠片もないってこんな人たちのことなんでしょうね。

    騙されないで欲しいな。

    • 騙されたくて騙される人はいないんですが、騙す方の気持ちはどうなんでしょうねえ。
      それが仕事だから、儲けないと生活できないから、上の人が怖いから?
      いろいろ理由はあると思うし、必ずしも違法ではなかったりするので、本当困ったものです。

  2. だださん、こんにちは~

    クロワッサンの記事を見ましたよ。
    チョコレートやお菓子が大好きなだださんだから、もっとふっくらしているのかと想像していたら、とってもスリムですっきりした方だったんですねぇ。
    お母様の嬉しそうな笑顔が印象的でした。

    うちの母の詐欺に騙された話を引用していただき、ありがとうございます。

    そして、2の「水道業者のぼったくり」を読んで、私の古傷を思い出して、うずいたわ。
    今のところ高齢者でも認知症でもない(たぶん)私ですが、数年前に、自宅のトイレが詰まった時に、ネットで業者を探して依頼して、業者に来てもらいました。
    決して騙されたわけではなく、1つの作業をやって、詰まりが解消されず、「次のステップの薬を使った作業をやると、○○円かかります」と言われ、それで解消できず、更に「便座を外さないとムリです、○○円かかります」と、イチイチ説明をされて、同意をしてのことだったのです。
    それが結局のところ、新品の便器+交換工事ができるほどの金額までなってしまいました。
    その時の心理状態は:
    1.トイレが詰まって何とかしてもらわないと困る。
    2.業者の出張費は既にかかっているのに、詰まりが解消されないまま、業者に帰ってもらうわけにはいかない。(金だけとられて、詰まったままで帰ってもらうなんてできないじゃない?)
    それで、お金がかかってもいいから、トイレを何とかして~!とあれよあれよと言う間に、高額な費用が飛んで行きました。

    業者が帰って冷静に考えてみると、
    1.我が家にはもうひとつトイレがあったのに・・・1日ぐらい時間を置いたら詰まっていたものも溶けて開通したのかも。
    2.トイレの詰まりを解消してもらうのが目的なのに、作業工程ごとにお金が別料金というシステム自体おかしい。
    3.わざと詰まりを解消しないように見せかけていただけではないか?という疑い。

    私は基本的に、訪問販売・訪問営業では物やサービスを買わないようにしていて、必要な時は自分で調べて依頼をして業者に来てもらうようにしているのですが、今回は自分でネットで探した業者だったけれども、失敗でした。ずっと自分の心に蓋をしていた案件でした。

    在宅介護しているお宅では、尿取りパッドなど便器にぽいっと捨ててしまったりされて、便器が詰まってしまうということはままあること。
    そんな時、どの業者に頼んだら安心なのか、とても難しい問題だ~。

    そんなわけで、我が家のトイレ、本来はそろそろリフォーム・交換が必要な時期にはなっているけれども、便器の詰まり作業だけで大金が飛んで行ったので、もうしばらくは旧いままで我慢することにしました。

    • アワキビさんこんにちは!
      無断でリンクと記事の引用をしてしまったことお詫びします。
      すみませんでした。
      お知らせしなくちゃと思ってる間にコメントを頂いてしまいました。
      具体的な被害例は貴重だと思うので書かせて頂きました。
      ニュースなどよりも、家族側、介護者側からの目線は貴重です。
      本当に災難でしたね…。

      水道のボッタクリ、やられましたか。
      詳細な手口のご紹介、ありがとうございます!
      参考になります。
      本当になんというか…うまいですねえ。
      トイレという切羽詰まったモノが人質にとられているわけですから、途中で止めることもできませんものね。
      そりゃ冷静さも失われますね。
      「普通の人が独力で安全な水道業者を見つけることは不可能に近い」
      とリフォーム業を営む人が言っていました。
      もしかしたら違法ではなく単に「そういう商い」として定着しているのかもしれません。
      相場や定価がないような。
      確実な方法はないようですが、せめて「紹介してもらうほうが幾らかマシ」だということです。
      って、誰に紹介してもらったらいいんだー!って悩みますね。

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