「暑いなー」
「暑いですねえ」
「今年は異常やな!」
こんな会話が挨拶として根付いてしまった今日このごろ。
訪問先の利用者さんとエアコンの話をしていた。テレビがずーっと
「命に関わる暑さです。積極的に冷房をつかいましょう」
と言っているから。
80代で一人暮らしのKさんは、こんなふうに話した。
「熱中症でようけ倒れてはるらしいな。そういう人はクーラーを使わへんねんて。そんで夜のあいだに熱中症になって死んじゃうんやって。テレビでこんなにも、今年は暑い、毎年とは違うから危険や、って言うてるのに、なんでクーラー使わんのやろ? やせ我慢なんかなあ? 私は大丈夫って思ってるのかなあ。アホやなあ!」
で、もちろんKさんは夜も冷房つけてるんですよね?
「夜? 夜はつけてへんよ。扇風機だけ」
なんでやねん!
心の中でツッコミつつ確認してみた。
窓は・・・寝る時は閉めますよね、ここ1階だし・・・扇風機だけじゃ暑いでしょ?
「そんなことないよ。私は毎年、扇風機だけなの」
だから今年はアカンって!
せ、せめて水分はとってくださいね、枕元にアクエリアス置いときますから、寝る前に飲んで。トイレに起きたときも飲んでください。
「そんなん忘れるわー」
死にますよ!
「はっはっはー」
これは認知症のせいなのかどうなのか。Kさんは認知症といっても軽度だから冷房をつける必要はわかっている(はず)。でも自分は大丈夫だと、なぜか頑なに思っているらしい。
で、この会話をした同じ日。
我が家でとんでもないことが起こってしまった。
家に帰ったら、なんか暑いのだ。猫と母のために冷房は一日中つけっぱなしなのに。
冷房なのに、もわもわと温かい風が吹きつけてくる。もしかして、エアコンが壊れたのか?
驚いてリモコンを手にとると、本来なら『冷房』と出ているはずの所に
『衣類乾燥』
と表示されていた。
冷房じゃなくなってる!
このままだと私たちがカラカラに干上がってしまう!
慌てて冷房に切り替えると、すぐに冷たい風が流れてきてホッとした。壊れたわけじゃなかったのだ。
衣類乾燥なんか使ったことがない。そんな機能があったのも知らなかったくらいだ。誰が変えたの? もしかして、母がリモコンをいじったの?と尋ねると
「うん、設定温度を変えようと思って」
高次脳機能障害の母は、これまでエアコンを操作したことがなかった。リモコンを見てもそれが何なのかわかっていなかったし、気にも留めなかったのだと思う。だが去年よりも進化した母は、エアコンの存在を思い出した。リモコンで操作できることを思い出した。昔できたんだから今でもできるはずだと思ってデタラメにボタンを押してみたらしい。
室内の気温が上がっていることに、母は気づいていなかった。気づいたところでどうにもできなかっただろう。もし私の帰宅が遅れていたらと…ゾッとする。絶対に手の届かない場所に置いておかなくては!
エアコンの遠隔操作は在宅介護に必要だと思った一日だった。