せつないけれど、おめでとう

スポンサーリンク

我が家の末っ子・U子は、知的にも身体にも重い障害をもつ障害者だ。そのため母はずっと走りまわっていた。U子を受けいれてくれる学校を探しまわり、リハビリを学ぶ勉強会をつくり、卒業後は働く場所が必要だからと、仲間とともに作業所をつくった。

母にとって最大の野望は
「私が死んだあともこの子が生きていける家をつくること」
だった。
入所施設ではなく「家」を。
「毎日そこから仕事に通って、休みの日はゆっくり過ごして。365日、お正月でも、風邪をひいても、安心していられる場所。それが家でしょう」
母は重度障害者用のグループホームをつくろうとしていた。

何年も何年も、母は頑張った。たくさんの仲間とともに、知識を集め、寄付を集め、支援者を集め・・・毎日毎日、走りまわっていた。けれどなかなかうまくいかず、挫折と試行錯誤をくりかえしていたある日、母は病に倒れて要介護になった。主介護者をうしなったU子は施設に入所した。

あれから5年。
とうとう母の悲願が叶えられようとしている。
重度障害者用のグループホームが、ついにできるのだ。
関係者の人たちが申し訳なさそうに報告をしてくれた。

「これも浩美さんのおかげです」
「あと5年早かったらよかったのですけれど・・・」

あと5年早かったら。
5年前にグループホームができていたら。
U子は施設に入らずにすんだのにと。
誰もが思ったのだろう。
グループホーム建設は、他でもない母が言い出したことだったから。

もうじき完成するグループホームには、妹の友達が多く入居するはずだ。そこから作業所に通い、休みの日にはゆっくり過ごし、風邪をひいても安心していられる家に。
・・・正直、うらやましいと思う。
妹がどんなにそこに住みたかったかと思うと、悲しくてたまらなくなる。

でも、思ったところでしかたがない。
今はもう施設がU子の「家」なのだから。

それよりも、グループホームができたことを祝おう。母が倒れたあとも、母の仲間たちが頑張って働きつづけてここまでたどり着いたのだから。グループホームがあれば、親が年をとっても倒れても、(私たちのように)あたふたしないで済む。みんなもう安心なのだから。だから、入居が決まった人たちと、長い長い子育てから開放される親御さんたちを祝おう。

おめでとう!

本日の猫写真。

肉球をぷにぷにするだけでこんなに癒やされるのは、どうしてだろう…

コメント

  1. だださんさんのお母様もだださんと同じお気持ちなのでしょうね。お母様が言い出して頑張って働いたお陰で何人もの子供達がその努力が実ったグループホームに入れるなんて、素晴らしい事ですね。

    • ありがとうございます。母はもっともっと深い思いを持っていると思います。でも仲間の方たちも本当に一生懸命働いていらしたので、そのお子さんが入居できるときいたとき、母は満面の笑顔で
      「よかったね、おめでとう!」
      と言っていました。