どうしてもバイオリンを弾きたくて

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私と母の2人バイオリンはこの夏も演奏会に参加する。グリーン・スリーブスと、モーツァルト33番と、バッハの協奏曲を弾く予定・・・なのだが。

難航している。

母は元バイオリン教師だが、高次脳機能障害のおかげで、楽譜を読むのが難しくなった。楽譜の左側が見えにくいし、どこまで弾いたか忘れちゃうし、五線がぐちゃぐちゃに混乱して見えるそうだ。

それでも去年はなんとかなった。何度も何度も、くりかえし楽譜を読むすることでヴィヴァルディを弾き切った。だから今年もいけるだろう・・・と、思ったのに。

今年はぜんぜん駄目なのだ。何か月もかかって、弾けるようになったのはグリーン・スリーブスだけ。モーツァルトもバッハも、どんなに練習をしても読めるようにならない。

去年より難しい曲に挑戦しているからか?
去年より練習時間をとれないせいか?

「どうしてこれくらい読めないんだろう」
と母は落ち込むし、
「このままじゃあ夏に間に合わない!」
と私は焦る。

でも、やってもできない練習なんて、時間の無駄だ。それでやり方を変えることにした。

まずは少しでも見やすいように楽譜を拡大コピーする。もともとB4からA3に拡大させていたが、それをさらに1.5倍する。

左:B4サイズ  右:A3に拡大したものを更に150%拡大

が、それでも母は読めなかった。ほんのちょっぴりマシになった程度。間違いだらけで、とてもじゃないが弾けるというレベルではない。

「これでもダメかーーー!」

ガックリきていたら、母が恥ずかしそうに申し出た。

「楽譜にドレミを書いたら読める気がするんだけど…」

私は言葉を失った。音符の下にふりがなを打っていく方法。それはたしかに有効だろう。でもそれは、小さい子がはじめて音楽を習うときにやる方法。5歳の子供がやることだ。そんなのはバイオリン教師のプライドが許さないだろうと私は思っていた。

だけど母は、やると言った。
どうしてもバイオリンが弾きたいから。

まずは少し簡単なバッハから。

「ミファソラシ、シ、ミ」
「ラファラソ、ファファラレドレド」

私が楽譜を読みあげ、母がペンで書きこんでいく。

「こんな楽譜、生徒たちには見せられないねえ」
母は苦笑いした。
「でもいつかはこれも良い思い出になるやろうね。こんなことあったなあって。思いだすやろうね」

うん。そうだね。
2人でいっしょに楽譜を読んだねって。
がんばったねって。
すごくすごく、いい思い出に。
すごく・・・
すごく・・・
眠たかったなあって。

だって退屈なんだもんこの作業!
1時間以上かかったし!
くたびれたわ!

明日はモーツァルトをやるよ!

ピンクの線は「ここが左端ですよ」の印。あんまり効果ない

かなり疲れたけど、このふりがな作戦のおかげで、母は音符の7割くらい読めるようになった。

残る問題は…半側空間無視。これも手強い障害だ。楽譜の左半分が見えないので、一行読むたびに

「次はどこを弾くの?」

と楽譜の中で迷子になり、突拍子もないところに飛んでしまうのだ。対象が大きければ大きいほど見えない部分も大きくなるから、拡大コピーをしたせいでよけい迷子になりやすくなった。また何かいい方法を考えなくちゃ。

本日の猫写真。

絨毯を掘り返すシシィさん。

サンジが勢いよく食べすぎてゲロしちゃったんだよね。かなり掃除して、ファブリーズもしたんだけど、シシィさんは臭いにうるさいから

「ここクサイ!クサイのよ!」

と訴えまくっている。明日、洗うから、勘弁してください…

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