うまくいかないときは、ぜんぶ他人のせいにする

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近頃、あんまりうまくいってない。
母のトイレは失敗ばかり。
楽譜はぜんぜん読めないし。
母もちょっぴり凹み気味。

こういうとき、母はなんでもかんでも私のせいにする。
「トイレ失敗するのも、楽譜を読み間違えるのも、公園の花が咲いてないのも、全部あんたのせい!」
私もぜんぶ母のせいにする。
「お金がないのも、料理が下手なのも、家の中が片付かないのも、全部おかあさんのせい!」
じゃあ。
結局は。
「ぜんぶお父さんのせいだー!」
「やっぱりオヤジが悪いんだー!」
声をそろえて2人で笑う。
いっぱい笑う。
うまくいかないときほど笑う。

うまくいかなくてイライラするときは、ほかの誰か(または何か)のせいにする。その場にいないオヤジとか、どこかでお昼寝しているシシィとか、車椅子の肘掛けとか、トイレの便座とか、おしっことか、楽譜とか。イライラを抑えるのは難しいから八つ当たりして発散させておくのだ。

「もう、シシィがお昼寝してるのが悪いんだから、シシィのせいよ!」
「おい、こら、おしっこ! なんでちゃんとトイレで出ないんだこのアホ!」
「楽譜、ふよふよ動くな! おかあさんが読めないじゃないか!」

はたから見れば馬鹿みたいだけど。
うまく出ないおしっことか、うまく読めない音符が悪いんであって、母が悪いわけじゃない。私が悪いわけでもない。そのほうが笑っていられるから。

サンジのせいにはしません。

春の陽気だ。仕事のあいまに母とでかけた。いつものベーカリーで小さなパンをいくつか買い、いつもの公園へいく、いつもの散歩コース。

まだまだ芝生も茶色いし花もない。でも、芽吹きの時をいまかいまかと待つ森は、静かな緊張感にみちて美しかった。