デイサービスはみんなでわいわい騒いで楽しむ場所だから、利用者さん一人ひとりとお話しする機会は意外に少ない。その少ない機会のひとつが、お風呂だ。うちは家庭用のお風呂に一人ずつ入っていただく形なので、利用者さんと介助者と1対1、ゆっくりと話ができる。
「きのうな、散歩に行ってん」
と、湯船の中で利用者さんが話しはじめる。
「天気がよくて、気持ちよかったから。家のまわりを歩いてな・・・」
話はのんびりとつづく。途中で知り合いに出会ったこと。花が咲いていたこと。寄り道をしたこと。そして最後にこう言った。
「散歩に出よ思ったのはな、本屋さんに行くためやってん。あんたの本を買うたろ思うてな」
その方は先日、要介護の2になったところ。転んだら自力で立ち上がることもできない体だが、調子の良いときはわりあいシャンシャン歩けるから
「よし、今なら本屋さんまで行ける!」
と思い立ったらしい。
私が本を出したことは雑談の中で上司が利用者さんたちに話してくれていた。ほとんど人は忘れちゃったけど、その方は覚えててくださった。それで
「いつもお世話になってるから買ってやろう」
と思ったんだって。
「あんたは私の若い頃に似てるから」
って。
暖かいとはいえ2月の弱い日差しの中を、杖をつきながら、ゆっくりゆっくり歩いて行ったんだろう。公園を横切り。ゆるい坂道をのぼり。信号をわたって本屋さんへ。
「でもな、本、売ってなかった」
20日の発売の本はまだ、田舎の小さな書店には届いていなかったそうだ。
ごめんなさい!
そして、ありがとうございます。
優しい利用者さんのために、一生懸命、働きます!
(そろそろゴハン?)
実は今日、介護職がひとり風邪でお休みだったんです。ちょっとキツかったー。
コメント
嬉しいですね‼️
自分のことだけでなく、周りに気遣いができるような歳の取り方したいですね😸
ほんっとうに嬉しかったですよ!
優しい利用者さんに喜んでいただける仕事をしようと思いました。