母はハロウィンが好きだ。この季節になるとウキウキしちゃくらい好きだ。去年はゾンビメイクをしてデイへ行くんだと言い張るので止めるのに苦労した。
「高齢者がゾンビメイクなんかしたらリアルすぎて怖いよ!救急車とか呼ばれたらどうすんの!」
姪っ子たちにも
「おばあちゃん、あのね、ハロウィンは小さい子のお祭りなんだよ」
と諭される始末。(姪っ子の住むオーストラリアでは幼児向けイベントだそうです)
それでもやっぱり母はハロウィンが好きだ。町中でジャック・オー・ランタンを見かけるたびに
「可愛い!」
「あのカボチャ可愛いね!」
と目をキラキラさせて言う。
今日だって、ベーカリーのレジ横に
『ハロウィンの合言葉をいうとお菓子がもらえます!』
と貼ってあるのを目ざとくみつけて
「あれ何? 合言葉ってどう言うの?」
と訊きまくってきた。
ちょっと恥ずかしいなと思いながら「トリック・オア・トリートだよ」と母に教えていると、店員さんが
「お菓子をどうぞ」
とニコニコ微笑みながらお菓子のいっぱい入った袋を差し出してくれた。
母は嬉しそうにキャンディを持って帰ってきた。
正直、私はハロウィンに興味がない。クリスマス商戦までのツナギだと思ってる。だから母に尋ねたのだ。
なんでそんなにハロウィンが好きなの?
外国のものだし、お化けのお祭りだよ?
すると母はこう答えた。
「だって楽しいじゃないの!クリスマスだって外国のお祭りでしょ? 国とか宗教とか、なんでもいいのよ楽しければ! 楽しまないと、もったいないじゃないの!」
もったいないから楽しむんだって。一度きりの人生だから、ちょっとでも楽しむ機会があれば逃したくないんだって。人生を楽しむことにかけては、母は天才的に貪欲だ。
本当はUSJのハロウィンイベントに連れていってあげたいんだけどちょっとキツいし、本物のかぼちゃでジャック・オー・ランタンを作るのはもっとキツそうだ。
ということで。
悪いけど、ハロウィン風のミスター・ドーナツで勘弁してください…。
幸い、今年のハロウィンはデイサービスのない日だから、母がゾンビ婆ちゃんになっちゃう心配はないけれど・・・家でも仮装したいかなあ。ヘルパーさんびっくりするだろうなあ。
コメント
何事も前向きで
新しい言葉大好きのお母様
大好きです。
思っても出来ない事もあると思いますが
自分が高齢になった時、そうありたいと思います。
ありがとうございます。
どうせなら楽しい老後を過ごしたいですよね。
母の性格だと思っていましたが、楽しもうという努力と心意気を近頃は感じます。