猫が悲鳴をあげた理由

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昨夜の11時頃。寝る支度をしていたら突然、
「ギャーッ!」
という悲鳴が聞こえてきた。人間ではない、猫だ。

・・・サンジだ!

悲鳴は2階から聞こえてきた。不安にかられながら私は階段を駆け上がった。
「サンジどうした!? 大丈夫!?」
と大声で呼びかけながら。

サンジは部屋から出てくるところだった。ゆっくりと、辺りを警戒しながら。
「サンジ?」
名前を呼ぶとサンジはちょっと嫌な顔をした。
「どうしたの? 何があったの?」
なでてやろうと差し出した私の手をすっと避けた。まるで野良猫みたいに。

サンジはむちゃくちゃ甘えん坊で、なでなでが大好きで、人の手を避けたことなんかこの9年間一度もなかったから、私はちょっとショックを受けた。

サンジはそのまま別の部屋に入っていった。私から逃げるように物陰にかくれた。ケガをしたのかな、と思った。傷ついた猫は人目を避けるものだ。

でもどうしてケガをしたのだろう。まさか家の中に蛇でもいたのか? サンジが出てきたのはオヤジの部屋だ。確認してみたけど虫一匹すらいなかったし、オヤジはいつどおり大いびきをかいて寝ている。サンジもいつもどおりオヤジの足元で寝ていたはずなのに。

いつもどおり、だから。
たぶん。
サンジはオヤジに轢かれたのではないだろうか。

サンジは人の足の間(とくに膝の間)で寝るのが好きだから。大の字で寝ているオヤジの足の間で寝ていて、寝返りをうった拍子に挟まれてしまったのだろう。きっとすごく痛かったに違いない。可哀想に!

見たところ血が出たり足が曲がったりということはない。それよりも
「お父さんに痛いことされた!」
とびっくりしたんだろう。子猫の頃、人間にいじめられた経験がフラッシュバックしたのかもしれない。それで私のことも避けたんだろう。

「どうしたの?」
そこに顔を出したのがシシィだ。
「ねえ兄ちゃん、どうしたの?」
私はシシィに、サンジのこと慰めてあげてねと頼んだ。私とは違い、シシィのことは避けなかったから。暗いからよく見えなかったけど、シシィはサンジがケガしてないかフンフン匂いをかいで調べていたみたいだった。


(「お母さんのベッドは安全にゃ!」
母が寝返りが打てないことを猫たちはよく知っています)

幸いケガはなかったらしい。サンジは朝にはすっかり元気になって
「お腹すいたにゃー!」
と盛大に要求していた。
そしてオヤジが
「なんかゴメンな」
と、ペコペコ謝りながらスルメをあげていた。

でも悪いのはオヤジじゃなくて、そんな危ない所で寝るサンジのほうだと私は思います。(シシィは絶対安全を確保してから寝るのに…)