利用者さんが彼岸に渡られた日は、その方をしのんで夕飯をつくる。
最後にお会いしたときシシトウを炒めていたMさんのときは、シシトウの炒めものを。
牛丼を喜ばれたTさんのときは、牛丼を。
「冷凍餃子が食べたいわ」と言っていたFさんのときは、冷凍餃子を。
今日は、Eさんの肉じゃがだ。
初めての訪問のときEさんは
「退院したら料理をしようって、ずっと楽しみにしてたの」
弾むような声で言った。
「クリームシチューを作りましょう!」
そこで一緒にシチューを作った。
ていねいに。
ていねいに。
バケツいっぱいのシチューを作った。
お料理上手なEさんの手料理に、ご主人は喜んでもりもり食べたと聞いた。
「次は肉じゃがを作りましょう。甘いめのね。甘いとなんでも美味しくなるんだから」
「はい!楽しみにしてます!」
でも、結局、作れなかった。
だから今夜は母と2人で肉じゃがを作った。
できるだけていねいに。ていねいに。
Eさんに教わったとおり、にんじんは乱切りにして。
じゃがいもも面取りをして。
ていねいに。ていねいに。
ヘルパーはみんなそうだけど、利用者さんを少しでもお手伝いしたいと思って仕事をする。
安全に居心地よく過ごしてもらいたいと思う。
でも、時にはわからない時もある。
かえってご迷惑だったかもと思うことがある。
どうすればよかったのだろうか。
あれでよかったのだろうか。
答えはもう返ってこない。
今はもう肉じゃがを作るくらいしか、私にできることはない。
甘いめの肉じゃがは、おいしかった。