昨日、入院したオヤジは、無事に心房細動のカテーテル治療を受けることができた。腎臓の数値がわるくて心配したけど案外うまくいった模様。
手術のとき、家族は何もできないけど、せめてそばにいてあげるべきだ・・・と思う。
だが在宅介護をしていると、こういうときは困ってしまう。母を連れて長時間出歩くのは難しいからだ。とくに今はあんまり調子がよくなくて、車椅子に2,3時間座っているだけで
「お尻が痛い、もう限界!」
と訴える。
とはいえ母もオヤジのことが心配だろうし、まさか家で待たせておくわけにもいかない。
どうしようかなあと思っていると
「私らが行くから大丈夫!」
助けてくれたのは親戚だった。
おばさんといとこが来てくれることになった。
「手術が始まったら教えてあげるから、あんたらは後でおいで」
「おかあさんを第一にしてあげて」
と言ってもらった。
お言葉に甘えて手術が終わる頃にいくと、別のいとこも来てくれて、担当医の説明を総勢5人で聞くことになった。うちのオヤジは愛されてるなあと思った。
久しぶりに顔をあわせた親戚たちと盛り上がるったは、オヤジの「ヘタレ伝説」だ。オヤジはまるで子供みたいに自分のことを何もできないから。耳が汚くて注意されたとか、私がガミガミ言わないと薬を飲むのもサボるとか、そんな話だ。
今回、私たちの知らなかった驚愕の事実も明らかになった。
「この病院、初めてやって言うてたけど、実は初めてじゃなかった。カルテが残ってた」
オヤジはもうずっと前に健康診断で引っかかり、同じ病院を受診したことがあったのだ。そのときも同じように心房細動だと診断され
『カテーテル手術しましょう』
ってことになったのに、オヤジときたら
『足から管を入れるなんて怖い!』
スタコラサッサと逃げ出して、その後いっさい受診しなかったそうだ。
嫌なことから逃げるのはオヤジの得意技! 頑張る、我慢する、努力する、工夫する・・・そういったことは全力で回避する人なのだ。
手術から逃げて心房細動を放置した結果、オヤジは数年後に脳梗塞を起こした。幸い後遺症は小さかったが結局はこうしてカテーテルを入れることになった。あのときちゃんと治療していれば脳梗塞もならなかったし、手術ももっと簡単だったろうに。
「アホやなー」
「ほんまアホやなー」
まだ麻酔が効いて眠りこけている枕元でさんざんにけなしてやったが、聞こえていただろうか。
母が
「おとうさん」
と呼ぶとオヤジは
「ふああ」
返事をした。
今日、唯一話題になったオヤジの美点は、母に優しいことだ。
「浩美にスイカを買って帰るんだあ♪」
とか会社でも言っていたらしい。買わなくていいと私は言ってるんだけど買ってくる。買ったことを忘れてまた買ってくる。そしてダブる。
母は言う。
「麻酔が切れると痛いから、おとうさんは今頃めそめそ泣いてるよ。
『お家に帰りたいよう、サンジに会いたいよう』
って泣いてるよ」
ヘタレなオヤジが看護師さんを困らせていなければいいのだが。