母もオヤジも頑張った一日

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今日は母のお楽しみの日だった。デイサービスでお菓子作り教室があるのだ。
それも母の大好物・ラングドシャを作るという。
私は母に頼んでおいた。
「家で作れるようにレシピを持って帰ってきて。前に作ったことがあるんだけど、どうしてかベトベトになってしまったから。上手に焼けるようにちゃんと覚えて帰ってきてね!」
「わかった!」
あわよくばレシピをもらって来てくれるかなあ、くらいに期待していた。

そしたら!
母ったら、なんとレシピを覚えて帰ってきた!

「まずね、バターとグラニュー糖をよく混ぜるの。よーくよーく混ぜるのがポイントなのよ。次に卵白をまたよーく混ぜる。それから薄力粉ね。かわいい形に絞り出して、オーブントースターで焼くの。オーブンじゃなくてもいいのよ。ベトベトになったのは、温度が低かったんじゃないかなあって先生が言ってた」

すごい!
すごいよお母さん!
よくこんなの覚えられるね!
普段はごはん食べたかどうかも忘れるのに。
トイレ行ったことなんか、出た瞬間に忘れちゃうのに。
よっぽど嬉しかったんだろうな。

「家で作ろうと思ってたくさん聞いたの。先生が喜んで教えてくれはったよ。だから作ろうね。ウフフ」

よっしゃ!
次の休みにオーブントースターで作ろうな。

ゴタゴタしている2匹

母だけじゃない。
今日はなぜかオヤジも絶好調。

昼ごはん時に、何を思ったか突然、
「俺、そうめん作る」
と言いだしたのだ。
作ってくれ、でも、食べたいな、でもなく
「作る」
と言った。
無気力ゾンビみたいなオヤジが急にどうした!?

そうめんなんて茹でるだけ・・・なんだけど、今のオヤジにとっては鍋を探すだけでも一大作業。
もちろん私が口でアレコレ教えなくちゃいけない。
一番の難所は「4倍濃縮のめんつゆを薄める」という作業だった。
ウンウン唸りながら、15分ほどかけてそうめん(麺のみ)が完成。
・・・何分間、茹でていたのかなんて考えてはいけない。
次回はキュウリくらい切れるようになるといいなあ。

それだけじゃない。
今日は歯医者へ行ったのだが、車で送っていったのに
「帰りは、一人で歩いて帰りたい」
と言うではないか!
歯医者から自宅までは600m。
筋肉が衰えまくったオヤジにとっては大旅行である。
また転んじゃうかもしれないが、血まみれになるかもしれないが、本人がやりたいなら、やったほうがいい。

オヤジのスマホにはグーグルマップの「現在地の共有」という機能を仕込んである。
GPSを使ってほぼリアルタイムでオヤジの居場所がわかる。
ちゃんと帰ってこられるのか心配で、私はスマホに釘付けだった。

さあ、オヤジは今、歩き始めた!
坂道を下りていくルートだ。
公園沿いを歩いている。
・・・あ、道路を渡った。危ないな。

杖をつき、小股でよちよち歩いていくオヤジが目にうかぶ。
がんばれがんばれ。
負けるな負けるな。
もう少し。
『初めてのおつかい』のテーマソングが頭に流れてくる。

今度はちゃんと歩道橋を使ったぞ。よかった。
住宅街へ入ってきた。
あと半分。

・・・ということろで動かなくなった。
GPSを更新しても現在地マークはずっと同じ場所のまま。
オヤジの動きが止まったのだ。
あれ?
もしかして転んだかな?

いや、違うな。
たしかあの広場にはベンチがある。
座って一休みしているのだろう。
・・・あ、また動き出した。
よかったー。

30分ほどかけて帰ってきたときは
「おかえり-!」
盛大に迎えてやった。
オヤジはもうヨレヨレの瀕死だったが
「と、と、トイレに、行きたい・・・!」
と口走った。
我慢してたんだな。
頑張ったなー!

コメント

  1. 泣けた!
    パパさん 偉いっ

    • ありがとうございます。
      今日はダラけています。

  2. だださん、今晩は❗️
    お父さま、お母さま、すごい⤴️⤴️
    お菓子作りも❗️
    うちの施設でも、ようやく七夕にお菓子作りが出来ることになりました~‼️(嬉)利用者さんも、今から楽しみにしておられます。
    もちろんソーシャルディスタンスと、食中毒には留意して…
    本当はコロナ前に、オリンピックにちなんだ大運動会を企画してたんですが…さすがにこちらは、延期です。

    お父さまも、しょげないでベイベーでしたね❗️すごい❗️頑張られました‼️

    • お菓子作りってやっぱりまだハードルが高いんですね。
      母いわく
      「絞り出すところしか、やらせてもらえなかった」
      そうです。あとは見てるだけ…
      私が働いてるデイでは、材料を分けてご自分のを各自で作る形でやってもらっています。
      大運動会、やりたかったですね!
      楽しみは来年にとっておきましょう!

  3. 私もだださんのスマホ画面の現在地マークの動きを覗き込んでいる気分で、ハラハラしちゃいました。

    母が93,4歳の頃の迷子事件を思い出しました。
    頭はしっかりしていて、毎朝、シルバーカーを押して結構な距離を散歩するのが日課でした。
    ある日、帰ってくるはずの時間になっても帰ってこない。
    私が探しに行っている間に帰ってきたら困る。母はケータイはもっていないし、母が覚えているのは固定電話の番号だけ。
    待てど暮らせど帰ってこないので、何かあったに違いないとルーティンの散歩コースをたどって探しに出ると、商店街で救急車で運ばれたおばあさんがいたという情報があり、詳しく知っている人にたどり着いて訊くと、怪我人の名前はわからないまま、近くのA病院に搬送されたという。母なのかどうかわからないままA病院にタクシーで駆けつけ、受付で問い合わせていると、奥から車椅子に乗せられた母が現れました! その瞬間、周囲にいた大勢の人の姿はぼやけて、私を見つけて安堵した母の笑顔しか見えませんでした。
    その後、どうやって帰宅したのかも全く記憶にありません。
    ハラハラした気持ちは昨日のことのように覚えています。
    母の怪我は救急車を呼ぶほどのものではありませんでした。
    どうして、誰も母から連絡先を聞き出してくれなかったのか不思議です。
    診察券だって、母のポシェットの中の財布に入っていたはずです。

    • こんにちは。
      あんじぇらさんのコメントもまた臨場感あふれるお話で…。
      しっかりしていても迷子になっちゃうのですね。
      迷子ほんと怖いです。
      うちのオヤジは転倒が多いのでそれも怖いです。
      GPSではそこまでわかりませんから。

      どうして連絡がこなかったのでしょうね。
      いくらお母様がしっかりされていても、診察券があるのならねえ。
      不思議ですね。

  4. お母様のレシピと作り方の記憶を、いやあ凄いわと感心
    しきりだったのすが、読み進めて
    ミスター愛妻家さんまでが「ひとりで歩いて帰りたい」
    と健気な心意気をご表明。

    こちらは少なからず気が揉めたようですが、無事に
    ご生還。
    本日は愛妻からではなく、遠くの他人からで恐縮ですが、
    おめでとうございますの代わりに一言。
     「えらかったねえ!」

    • ロコさん、こんにちは。
      今更で申し訳ありませんが、オヤジが頑張ったのには下心があったことに気が付きました。
      「一人で歩いて途中でタバコを買おう!」
      だが道中には店もタバコの自販機もなくがっかりしたのでしょうね。
      動機はともかく、いい運動になりました。