しりとりとアップルパイ

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コロナウィルスのせいで休校になり、遊びに出かけることもできず、パワーを持て余した子供たちはストレスが溜まって大変だという話をよく聞く。
それに比べて高齢者は大人しく引きこもっている・・・というわけではない。
「お出かけしたーい!」
「遊びに行きたーい!」
うちの母は毎日叫んでおる。デイには行ってるんだけどねえ。
オヤジもオヤジで
「競輪・・・いきたい・・・」
ぼそぼそ呟いておる。競輪は行かんでもええやろ。

毎日退屈で困っているが、今は危ない時だから、家の中で遊ばせておくしかない。
せめて気分転換にアップルパイを作ってみた。

オヤジにリンゴの皮を剥いてもらい、母が細かく刻む。
フィリングを炊くのは私の仕事。
私が冷凍のパイシートを伸ばし、母がフィリングを詰めていく。
こぼれて散らばったリンゴを掃除するのはオヤジの仕事・・・やってくれなかったけど!

パイを焼いている間、手持ち無沙汰になった。
それはそれで面倒くさい。
「トイレ行く!」
「トイレ行きたい!」
「ちょっとトイレ行ってくるわ!」
母はヒマになると『トイレ行きたい病』にかかるのである。
トイレラッシュを止めるには仕事を与えるしかない。
そこで「お父さんの相手してあげて」と母に頼んだ。
「えー、何をしたらいいのよ?」
なんでもいいよ。しりとりでもやっといて。
てきとうなことを言ったら
「じゃあ、しりとりの『り』でリンゴ!」
「ご、ご、ゴリラ!」
本当にしりとりが始まってしまった。

母はともかく、言葉数の少ないオヤジは、しりとりなんて楽しくないだろう。
悪いことしたな。
・・・と、思っていたのだが!
案外、続いた。

しかもオヤジの口からはびっくりするような、そんな言葉しってるんだ、みたいな珍しい答えがポンポンでてくるのだ。

「る、る、ルク、ルクセンブルク!」
「れ、レニングラード!」
「こ、コンゴ!」
「ず、ず、ず、厨子!」

普段は「うん」とか「ううん」しか言わないし、なにか言おうとしてもすぐに忘れちゃうから
「おとうさん、こんなに喋れたんだ・・・」
母がぼそっと呟いたくらいである。

こんな調子で20分間しりとりは続き、そして、パイが焼けた。

焼きが甘かったのでこのあともう一回焼き直しました…

パイもおいしかったけど、しりとりがうまくいったのは本日の収穫だった。
なかなか喋らないオヤジに強制的に声をださせ、ちょっとでも頭を働かせるように。
母にはまた頑張ってもらおうと思う。