毎週火曜は、母がお留守番をする日だ。私が仕事のあいだ、母ひとりで待っていてもらう。といっても長時間は危険なので、午前中にヘルパーさんに入ってもらう。ベッドから車椅子への移乗、トイレ介助と水分補給(コーヒーの用意)をお願いしている。
「ヘルパーさんが来てくれる」というのはとても安心だ。仕事をしている間中「母、大丈夫かな」「ベッドから降りようとしていないかな」と心配しないですむ。
ところが。
今日、昼休みに帰宅したら、えらいことになっていた。
もちろんヘルパーさんは帰った後で、母はひとりで車椅子に座りテレビを見ていた。
「あれ?ひざ掛けは?」
探すと横の椅子にかけてあった。濡れていた。
・・・あ。
おかあさん何かこぼした?
「うん、やっちゃった」
ふふふと母は笑った。
「お喋りしててねえ、コーヒーをねえ、ばちゃーんと」
コーヒーカップをひっくり返した。しかも、手前に向けて。
「あああああ!」
思わず叫んだ。
「おかーさん、びっちょびちょやん!」
ズボンも。
上着も。
インナーも。
車椅子の座布団まで。
コーヒー色に濡れていた。
・・・こりゃ大変だ、着替えなくちゃ。
着替えをしながら母はのーんびりと話してくれた。
「もう、大変やったのよう。ヘルパーさんがねえ。大慌てでねえ。右往左往してはってねえ」
・・・そうだろうねえ。
着替えさせてもらう時間、なかったのかな?
「うん、そうみたい。『どうしましょ、どうしましょ!』って、大慌てで事務所に電話してはったしねえ。私が『もういいよ、あとは娘にやってもらうから』って言って、帰ってもらった」
・・・それは気の毒だったねえ。
家族としては
「目の前でコーヒーこぼしたのを見ていたのなら、ヘルパーさんに着替えさせてほしかった」
という気持ちが1ミリもなかったとは言わない。だって冷たそうだったし。
でもねー無理なんだー介護保険だからー。
訪問介護のサービス時間はきっちり決められている。うちは30分だけだ。時間がきたらヘルパーさんは次の仕事に行かなくちゃいけない。そろそろお暇を…という時に母がコーヒーをひっくり返したのは最悪のタイミングだったのだ。着替えなんて1分2分でできることじゃないし、延長すれば追加料金が発生してしまう。「それは困る!」という家も多い。そのまま帰るという決定は事業所の指示だっただろう。
ヘルパーさんがコーヒーこぼしたわけじゃないし、命に関わることでもないし、家族はじきに帰ってくる。それでも自分で動けない利用者を濡れたまま置いていくのは、ヘルパーさんとしてはさぞかし心苦しかっただろうと思う。しかも母の部屋には雑巾はない。制服とか濡れてなければいいのだけれど。
それからすぐに事業所から電話があって、お互いに「ごめんなさいね」を言い合った。ヘルパーさんが来てくれるといっても、母を一人にするということは、なかなか油断できないもんだと思った。
本日の猫写真。
サンジです。さっきシシィに背中をかじられました。びっくりして思わず悲鳴をあげちゃいました。悲しい顔で
「なぐさめて…」
って言ってます。
コメント
こんばんは。
お母様冷たかったでしょうね。熱いコーヒーではなかったのかな。ヤケド心配はなかったですか?
だださん、コーヒーの染みぬき大変でしたね。お疲れ様です。
ブログを読んでだださんもお母様もヘルパーに対しての理解には頭が下がります。
ヘルパーに依存してあれもこれもやってほしい利用者さんや家族も多い中、ここまでときちんと線引き出来るのはすごいです。
…でも介護保険の事をあまり理解してないほとんどの方は「なんでそのままで帰れるの?」ってモヤモヤが残ってしまう方が多いんじゃないでしょうか。私個人としてもやっぱり着替えさせてよーって思います。
たださんが昼に帰って来られる状況だったとしても、せめてお母様から聞く前に伝言のメモなり携帯の留守電にでも教えて欲しかったですよね。
今後も何が起こるかわかりませんし、延長可能か等お話しされて信頼関係を維持してほしいです。
ありがとうございます。
冷たい牛乳をどばどば入れたコーヒーなので熱くはなかったと思いますし、ぬれたのは主に服なので大丈夫でした。
私自身がヘルパーなので
「もし自分だったらどうするだろう」
と考えてしまい、申し訳なくなっちゃいました。
次の仕事が詰まっていたらだいぶ悲壮な感じになってたかも。
居合わせたヘルパーさんは、上司に電話で相談し、
「家族さんには電話で説明するから、あなたはすぐ次の仕事に行きなさい」
と指示されたのでしょう。
メモも良い手だと思いますが、慌てて下手なこと書いちゃったら誤解を招く可能性もありますので、サ責から冷静に説明してもらうのが安全策だったのでしょうね。
今のヘルパーさんはベテランで頼もしいので、信頼はしていますよー。
向こうはどう思っているかわかりませんが(笑)