夏祭りの夜

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夏祭りに行ってきた。障害者の作業所の夏祭りだ。この施設では主に知的障害のある人たちがさまざまな仕事をしている。

うちの妹にとっては十五年ほど勤めていた(というかお世話になっていた)古巣だから、この夏祭りは1年に1回の里帰りイベントだ。知り合いも多く、母や妹の姿を見つけてたくさんの方が声をかけてくださった。
「U子さん!」
「U子さんだー!」
「わあ元気だった!?」
懐かしそうにかけよってくる介助員さんも多かった。言葉の苦手な人は笑顔で私の肩をポンポン叩いた。「久しぶり!」と言ってくれてるらしかった。U子は嬉しそうに次から次へと友達を探していった。

にぎやかな音楽。ステージの演物。屋台の焼きそば。たこ焼き。フランクフルト。みんな笑顔で、晴れやかで、幸せそうだった。

盆踊りがはじまった。炭坑節とか。私はよく知らない。というかぜんぜん踊れない。でも妹が参加したいというので踊りの輪に加わった。

といっても私は車椅子を押して歩いただけ。妹だって踊れるわけじゃないからただ車椅子の中でにこにこ笑っているだけ。元ヘルパーさんがやってきて、妹の手を引いて踊らせてくれた。

盆踊りの輪の中にはもちろん上手に踊る人たちもいたけれど、私たちと同じように踊れない人、踊ってるつもりの人、一緒に歩いて踊りの気分を味わってる人、逆走しちゃってる人といろいろだった。共通しているのは、ただ、楽しいってことだけ。踊れる人も。踊れない人も。踊りの気分を味わってるだけの私たちも。ただただ一緒に楽しんだ。

PTの先生とも何年ぶりかで再会した。
先生は、先生なのに
「U子さん! あの頃はたくさんのことを教えてくれてありがとう」
と言った。思わず「逆じゃないですか?」と尋ねたら
「違うの、私が教えてもらったのよ。ね?」
と先生は微笑んだ。妹は照れていた。

世の中には「生産性」がどうのとか言う人がいる。重度障害者は不幸しかうまないと思い込んだ殺人鬼もいる。そんな人たちもみんな一緒に夏祭りを楽しめばいいのに。一緒に盆踊りを踊ればいいのに。この人たちの笑顔をちゃんと、ここにある幸せを、ちゃんと見ればいいのにと思った。

体を動かせない人も、働けない人も、税金を収められない人も、結婚できない人も、子供をうめない人も。誰でもみんな幸せになることができる。そして、誰でもみんな、ほかの誰かを幸せにすることができる。・・・ここへ来て、ちゃんと見ればわかることなのに。

コメント

  1. 素敵な夏祭りですね😄
    人は自分の狭い視野の中だけで判断してしまう。もっとたくさんの世界があるのに、たくさんの価値観があるのに。
    ぜひたくさんの方達に参加してほしいお祭りですね。

    • ありがとうございます。
      生きていれば誰にでも、大変な苦労や葛藤や悲しみや、本当にいろいろありますが、だけど幸せになることはできるんです。
      どの人にもその権利があるのです。
      今の日本にはまだまだダイバーシティは広まりそうになりですね。

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