とあるおばあちゃんが言った。
「昔は暖房なんてなかった。冬になると土間にムシロをひいて、そこに座って縄をあんでた。そら寒かったで。冷たかったで。その頃とくらべると、今の時代はもう、天国や。天国に住んどるみたいなもんや」
(ファンヒーターの天国でぬくぬくと温まる猫2匹。)
それで思い出した。アジアやアフリカを旅しているとき、私が日本から来たのだというと、よく
「ああ、日本!」
と、羨望のまなざしを向けられたものだ。
「日本人はみんな車とパソコンを持ってるんでしょう? みんながお金持ちで、みんなが新しい服を来てる。子供はみんな学校に行けるし、おいしいものが食べられる。夢みたいなところだね!」
おばあちゃんは続ける。
「ひとつ、わからんねんけど。暖房も冷房もあって、食べるもんもようけあって、テレビまであって、今の人らは天国に住んでるみたいなもんやのに、どうしてノイローゼとかなるんやろ? わたしら貧農はほとんど奴隷みたいなもんやったけど、心の病気とかなる人おらんかったで? 凍えて死ぬことはあったけど」
不思議だ不思議だと、おばあちゃんは首をひねった。
私たちは今、天国みたいで夢みたいな所に住んでいるのに。こんなにも恵まれているのに。こんなにも幸せなのに。どうして「昔は良かった」というのだろう。どうしてこんなにも、いろいろと・・・どうしてなんだろうなあ。
コメント
だださん、こんにちは。
今日の記事を読んでいて、すぐに私の記憶もよみがえりました。
かつて・・本当に大昔ですが、ウィーンにドイツ語の勉強に行った時のことです。
(直行便はなく、アエロフロートに乗り当時のソ連でトランジットしなくてはならなかった時代です・・・)
学校には当時の東欧から来た人も多くいました。
他にもインドなどから。
皆、オーストリアに永住したくて言葉を学んでいた人たちです。
雑談の折に、今自分たちの国で流行しているものの話をしていたのですが
たしかユーゴスラビアから来た人が一言、「撃ち合いだね」と言ったのです。
皮肉な笑顔で、情けないような、悲しいような、彼の複雑な表情が蘇りました。
彼らには「いいな~、日本。豊かで自由なんでしょ。」と
羨ましがられましたが、当時まだ10代の子供だった自分には
ヨーロッパに住める方がよほど羨ましかった。
今なら日本に「永住できる」自分が恵まれていることが、理解できます。
こんなに(時に過剰なほどに)便利で
快適な生活の基盤を作ったのはお年寄り、先人です。
敬って然るべきですよね。
こんにちは。
ユーゴスラビアの方の一言・・・重いですね。
ソ連時代と変わらず今も紛争は各地で続いています。
殺される心配がなく、明日も生きていられると思える日本はどんなに素晴らしいことか。
でも天国には天国なりの弊害があるのだと、説明したところで彼らには理解できないでしょう。
>快適な生活の基盤を作ったのはお年寄り、先人です。
>敬って然るべきですよね。
そうなんですよね。
地獄のような苦労があったからこそ今があるのですね。