人は変われる

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玄関の敷物がぐっちゃぐちゃになって三和土に落ちていた。拾い上げようとしたら、
「まだ入ってるよ?」
とサンジが言った。

う、うん。
たしかにまだ、入ってるね。

・・・じゃなくて、出なさい!

閑話休題。

今日はフルーツジュースを作ってみた。果物好きな母は毎朝のように季節の果物をジュースにして飲んでいたのだ。最近は私が忙しくてあまりやってなかったのだけど、ふと思い立ってリンゴとバナナのミクッスジュースを作った。

が、なぜか飲んでくれない。珍しいね、どうしたの? と尋ねると
「ごめんね、おかーさんはジュースが苦手なの」
・・・え? フルーツジュースだよ? 好きでしょ?
「昔から苦手よ」
だって毎朝飲んでたじゃない? このブレンダーだって、ジュース作りたいからってわざわざ買いにいったんじゃないの。
「覚えてないなあ。とにかくジュースは嫌いなの!」
えええええ・・・。

理由はわからないけど、突然好みが変わることって、よくあるらしい。
「病気をしたら好みが変わった」
というのが一番多いパターンで、
「退院祝いにおばあちゃんの大好きな最高級うな重を用意したのに『こんなん嫌いや』って一口も食べてもらえなかった」
という悲劇を聞いたことがある。体が必要とする栄養素に変化が起きているのだろうか。味覚障害の場合もあるかもしれない。

うちの母も半年間の入院のあと、大嫌いだった麺類が大好きになり、逆に大好物のゼリーは一口も食べられなくなってしまった。そして今度はジュースがダメだと判明した。

好きだったものが嫌いになる。嫌いだったものが好きになる。人って変わるもんだなと、私はラーメンを啜る母を見るたびに不思議な気持ちになる。それが良いことか悪いことかは分からないけれど。

母が倒れてから、我が家は変わった。介護なんて無理!家事なんてできない! と断言していたオヤジが今では毎週、母のトイレ介助をし、なんとかかんとか料理を作っている。暇さえあれば遊び歩いていた私が、まったく遊ばず家にいて、インドアな主婦やっている。人は変わるもんだ。変わっても幸せに暮らしていけるもんだ。

そういえば昔、自分から苦労ばっかり背負いこむ子がいて、思わず「もうちょっと楽に生きなよ」と声をかけたら
「こんな年になったらもう変われないよ!」
と言われたことがある。あの頃、お互いまだ30代半ばだったのに。まだ若かったのに。
「いや、変われるよ!」
と今だったら言ってあげられるのに。人間、40になっても60になっても変われるもんだよ、と。あの子は元気でいるかなあ。