朝、カーテンを開けたとき、
「よし!」
思わず声がでた。
よく晴れた。秋晴れだ。今日だけは晴れてほしいとみんなが願っていたとおりに。
今日は職場(デイサービス)でバザーをやる日なのだ。
準備には何週間もかかる。
バッタバタだけど楽しい日々だ。
バザー商品を集めたり、値段をつけたり。
腕自慢の調理師さんやたちに手作りケーキを焼いてもらい。
利用者さんにもクッキーを作ってもらい。
前日は時間をかけて準備して。
今日も早くから出勤しておはぎを作った。
よく晴れたこともあって、バザーは成功した。
お客さんが大勢きてくれた。
利用者さんたちは楽しそうに商品を買っていた。
コーラスの発表もうまくいった。
みんなにこにこ笑ってた。
ボランティアのヘルパーも調理師さんもお客さんたちも笑顔だった。
バタバタしたけど、なんだかとても幸せだった。
午後になり、
「あーしんど」
と思わずつぶやいたら
「こっち座り」
利用者さんに呼ばれて、労ってもらった。
「あんたも大変やな。お茶いれたるわ」
わあ、利用者さんにお茶を入れていただくなんて! 嬉しすぎる!
・・・と思ったら。
「無理やわ」
急須が重たすぎて利用者さんには持ちあげられなかった。お気持ちだけ頂いて自分でいれた。
帰り際。
とある利用者さんが輝くような笑顔で
「ああ楽しかった!」
とおっしゃった。
「本っ当に、よかった。ありがとう」
その方は月末にデイを辞めることが決まっている。遠くに引っ越すんだそうだ。
仕方のないことだけれど、引っ越しが高齢者に与える影響は、よく知られているとおりだ。聡明なその方にとっても、大変な勇気のいることなのだと思う。
せめてこのバザーの思い出が、みんなで歌った歌が、新しい戦いの日々に勇気をもたらすものであってほしいと願う。