おでかけは最高のリハビリ! 車椅子で旅に出よう!

『おでかけは最高のリハビリ!要介護5の母とウィーンを旅する』出版にあたって、「よし私も!」思い立った方のために、私がウィーンへ行くときに知り得た情報と、感じたことをまとめておきます。

この情報は2016年~2018年のものです。更新の必要があればメールフォームよりおしらせください。

目次

飛行機

2016年にウィーンへ行ったときはオーストリア航空でしたが、以下に書くことはどこの航空会社でもだいたい共通していると思います。

飛行機を予約する際には、事前に障害者であることを伝えておきます。自分で歩けるか否か(いざというとき一人で逃げられるか否か)は必ず伝えます。その他、車椅子の重量、たたんだときの大きさ、材質、バッテリーを積んでいるかどうかなどの情報が求められるので答えます。旅行会社を通せば楽ですが、回答の仕方は航空会社によっては書類だったりFAXだったりメールでOKだったりします。

飛行機にのる時には、車椅子を航空会社のものと交換する必要があります。飛行機の通路は狭すぎて、一般の車椅子では入れないからでしょう。「搭乗の直前まで自分の車椅子を使いたい」と事前に伝えておくことがベストです。他人の車椅子は体にあわないため、疲れるし不安定だからです。搭乗口のところで乗り換えさせてもらいました。機内に入る時、車椅子の大きな車輪がはずれ、スリムな車椅子となって通路を進むことができます。が、このとき両サイドの肘置きがはずされるので、むちゃくちゃ不安定でした。上半身が安定していない方は要注意です。係員によっては「今すぐ乗り換えなくちゃダメだ」って言われることもあります。

座席はエコノミーでしたので狭いです。座席指定ができますので、前の広い席を指定することができます。エクストラレッグルーム(有料)がいちばん広くて窓際だそうです。私たちは真ん中の席、ギャレーの後ろの席をとってもらいました。そこなら足元がわりと広いうえに料金もかかりません。

帰りはビジネスクラスでしたので、座席を倒せばベッドのように平らになって、ぐっすりと眠ることができます。が!場合によってはビジネスは、介助がすごくやりにくいです。肘掛けが大きすぎ、手が届かないんです。上半身を支えなければ食事がとれない方など、エコノミーよりも介助が難しくなるかもしれません(別の航空会社ですが、全身障害のある妹のときはかなり苦労しました)。一長一短です。

オーストリア航空には上半身を支える特殊シートのようなものがあるとも言われたので、必要な方はリクエストをしてもいいかもしれません。機内に持ち込める個数は決まっていますが、姿勢保持に必要なクッション類は見逃してもらえました。

移乗は基本的に自分たちでやります。でももちろん、危険な場合は手を貸していただけます。エコノミーの場合、肘掛けがはずれる席もあるそうです。が、指定しても「確実とは言えない」と言われました。

機内のトイレは、エコノミーもビジネスも車椅子が入れる大きさではありませんでした。ビジネスのほうがちょっと広くて使いやすい程度。私が乗った飛行機は、ドアを開けっ放しにしてトイレを使うという状態でした。カーテンで仕切り、他の人が来ないようにCAさんが見張っててくれました。トイレは機体によってかなり差があり、エコノミーでも車椅子が入れる大きさに広がるという飛行機も見たことがあります。どんなトイレなのかは航空会社に問い合わせてもよくわからなかったので、乗ってみるまで分からないかもです。手すりも、全然ないか、あってもごく小さいものだと思っておいたほうが良いです。汚れた紙オムツはどのように始末するべきかはCAさんにきいておきましょう。また、オーストリア航空は特別食にも対応しているそうです。

空港

日本から到着したとき、ハンディのある人は「しばらく待ってて」と言われ、最後に降りることになります。他の乗客がみんないなくなった頃、空港の職員さんが機内用車椅子をもって迎えにきてくれます。一般の人は通路からタラップやバスをを使って移動するのですが、車椅子の場合は専用のリフト車が迎えにきてくれます。時間はかかりますが混雑しないので楽ちんですし、ちょっとめずらしい景色を見ることもできますよ。ちなみに妹とリフト車のない空港に行ったときは力持ちの男性職員が肩にかついでタラップを降りてくれました。

運がよければ、リフト車を降りたところに自分の車椅子が待っていて、すぐに乗り換えることができます。が、なかなか車椅子が出てこないこともあるそうです。このあと荷物のピックアップや入国審査がありますが、ウィーンの空港では職員さんがそばについてずっと助けてくれました。介助者がいない場合、タクシー乗り場などまでアテンドしてもらえそうです。

ウィーンの職員さんはとても優しくて、大丈夫?大丈夫?と何度も声をかけれくれました。きっと私たちが疲れて死にそうな顔をしていたからでしょう。

空港では、到着ロビーのと出発待合のところと、2カ所の身障者用トイレを使いましたが、いろいろダイナミックすぎて困りました。便器にすわって立ち上がろうにも、手すりが遠くてぜんぜん届かず、2人介助が必要でした。

空港-ホテル間の移動

シュヴェヒャート・ウィーン空港からウィーンへ行く手段はいくつかあります。

シャトルバス 30分間隔で運行。シュヴェーデンプラッツ行きとウィーン西駅行きの2路線
シティ・エアポート・トレイン(CAT) 16分でミッテ駅まで着く
一般タクシー 税関を出て左にタクシーカウンターがある。混み合うことも。
空港送迎サービス タクシーとさほど変わらない値段で運んでもらえるし、いちばん楽ちん。大きな車両もあるのでたくさんの荷物や車椅子を乗せるのに便利。

現地会社ではATSAirportDriver など

日本の旅行会社も送迎サービスをやっているが少し割高になる可能性も。

Sバーン 郊外へ行く列車。フロリツドルフまで37分
国鉄 ウィーン・マイドリング駅行きとウィーン中央駅行きがあり、30分おき

介護タクシーは空港にはなく、ネットで探せば予約できるはずですがサイト消えてました。また探します…

私たちは一般のタクシーではなくあらかじめ旅行会社に車を頼んでいきました。ワゴンには乗れないので「セダン限定で」とお願いしておきました。運転手さんが、税関を出たところで名前を書いた紙を持って待っててくれました。帰りはホテルからタクシーで空港へ向かいました。

ホテル

ウィーンには由緒あるホテルがたくさんあります。が、バリアフリーの点では新しいホテルのほうがオススメです。古い建物はバリアフリーの改装が難しいからです。アメリカ系の新しいホテルなどのほうが車椅子に対応したバリアフリールームがあり、使いやすいようです。

ただ、バリアフリールームの数は限られていますので、できるだけ早めの予約が必要です!

バリアフリーなら何でもいいというわけではありません。トイレに手すりはあるか。シャワーチェアはあるか。ツインかどうか(ダブルベッドは場合によってはかなり介助しにくい)。バスタブが必要、など、その人によってチェック項目は変わってくるでしょう。

いちばん重要で調べにくかったのがホテルの部屋の情報、なによりもトイレの情報です。ウィーンのバリアフリー情報サイトには各ホテルのバリアフリーの詳細(入り口の幅からトイレの手すりの有無まで)みっちり書かれていますので、読み込んでみる価値があります。

また、ホテルの立地はとても重要です。ウィーンの街はとてもこぢんまりしているので、立地さえよければホテルから徒歩でたくさん観光ができます。リンク通り沿いか、それに近いところがオススメです。

市立公園の周辺には、私たちの泊まったヒルトン、最初の候補だったインターコンチネンタルホテルなどが並んでいます。

交通

私たちはほぼ地下鉄とタクシーしか乗る機会がなかったのですが、車椅子でもほぼ困ることがないように作られています。

【地下鉄】
いちばん使いやすそうだったので何度も乗りました。どの駅もエレベーター完備。先頭と最後尾の車両がバリアフリーになっており、なんと、扉があくとスロープがでてきます! これには感動しました。車掌さんが、よっこらしょとスロープを持ってこなくてもいいんですから。車椅子が停められるエリアもとても広いので安心して乗ることができます。路線図もさほど複雑ではないので、田舎者にもわかりやすかったです。

【トラム】
可愛らしいトラムには新型・旧型と2種類走っています。新型なら問題ありませんが、旧型トラムは階段があって担ぎあげるそうです。トラムは頻繁に走ってますし、電光掲示板を見れば「次の新型は何分後に来ます」と表示されています。親切です。

観光客向けの黄色いリングトラムが便利です。ウィーンの幹線を一周するトラムで、観光名所にきたら教えてくれます。

【バス】
これも車椅子が2台乗るスペースがあるそうです。

参考・オーストリアのトラム・バスの乗り方教えて!(阪急交通社)

【チケットについて】
チケットは必ず乗る前に買っておきます。1回券から1週間乗り放題までいろいろあって、もうややこしいのでうまく説明できません。こちらのサイトをどうぞ…

交通に関しては障害者割引とかなさそうです。ちゃんとバリアフリーできてるから、もう割引もいらないよね?って感じでしょうか。すばらしいです。チケットは乗る前に買います。タバコ屋とかそのへんの売店でも売っています。

【タクシー】
流しのタクシーというものはありません。ホテルから乗ったり、お店で呼んでもらったりしました。セダンが多いですが、背の高いワゴン車もわりと多く、どんなに頼んでもワゴンしか来ない時もあって、乗り込むのに大変苦労しました。

道程や方法を調べるのには、ウィーン交通局のサイトVORが役に立ちました。アプリもあります。

観光

歴史あるところに段差あり。でも、たいていのところはバリアフリー対応しているそうです。さすがウィーン!

【教会】
シュテファン大聖堂は問題なくフラットでした。アウグスティーナ教会には入り口にスロープが設置されていましたが、けっこう急でした。ウィーン少年合唱団が日曜ミサに登場するホーフブルク王宮礼拝堂はとても狭い上に階段があり車椅子は無理とのこと。

【お城】
ホーフブルク宮殿・・・リフトなどにより館内を移動できる。割引あり。

シェーンブルン宮殿・・・車椅子の貸出あり。館内はバリアフリーでエレベーター設置。わりと使いやすそうなトイレも一階にありました。グロリエッテへ行くには坂道をのぼる必要があるそうです。ウィーンいちばんの観光名所なので混み合いますがシシィチケットを購入すれば好きな時間に入れます。

ベルヴェデーレ宮殿・・・エレベーター設置。快適に見ることができました。上宮から下宮にいくほうが楽ですが、上宮と下宮がけっこう離れていて、途中一箇所だけ、かなり急なスロープがありました。他にも道があったかもしれませんがわかりませんでした。よそに比べて空いているので、ゆっくり見ることができます。

美術史美術館…ここもお城です。バリアフリーの出入り口があり問題なかったそうです。

【音楽家の家について】
ベートヴェンなど著名な音楽家ゆかりの家がたくさんありますが、歴史あるものは建物が古くエレベーターがついていません。著名なところで車椅子で楽に行けそうなのはモーツアルトハウスのみでした。モーツアルトハウスはリフォームされ完璧にフラットなので快適に見ることができました。ただしエレベーターを使うときは係員さんに頼んで動かしてもらわなくてはいけません。あと、音楽の家(ハウス・デァ・ムジーク)にもエレベーターがあります。

【船】
町中に船着き場があり、ドナウ運河クルーズや、バッハウ行き、ウィーン-ブラチスラバ(スロバキア)間で高速船などが出ています(TWIN CITY LINER)。ウィーンの町中にある乗り場と船内は車椅子もOKでしたが、ブラチスラバの桟橋がどんな様子なのかは不明なままです。短時間で見どころが多く、乗り降りが安全にできそうなドナウ周遊が安全かもしれません。

劇場・コンサート

WEBサイトで簡単にチケットが買えるコンサートでも、車椅子席は「メールでお申し込みください」とされていることが多いようです。私は楽友協会ホールに「○月○日○時のコンサートに車椅子1名介助者1名でお願いします」と英語でメールしました。「OK、取れましたよー」のお返事とともに、オンラインチケットが添付されてきます。それをプリントアウトして劇場へ持っていき、本物のチケットと交換しました。オペラ座・フォルクス劇場ともにメール申し込みだそうです。劇場によっては割引もあるそうです。楽友協会の座席は、木の椅子をどけて、そこに車椅子を押し込む感じでした(わりと狭かったです)。他の劇場については楠さんのブログが詳しいですのでどうぞ(オペラ座の車椅子席)(フォルクス劇場の車椅子席

買い物について

古く小さな店はやはり車椅子が入るには厳しいところもありました。でも観光客向けのお土産屋さんならたいてい大丈夫でした。混雑に耐えられたらですが。一般のお店は日曜定休だそうですが、観光客向けの店や駅前の大きなスーパーなどは開いていました。

【ナッシュマルクト(市場)・骨董市】
土曜の骨董市は混雑でしたが、道自体は大きな段差はないので行けないことはないです。ウィーンは人が親切なので助けてくれます。

【紙オムツの購入について
成人用紙オムツは当然、売られています。「dm」というドラッグストアが街中にたくさんあります。でも紙オムツは日本のものと少し違っているようです。まずリハパンをあまり見かけません。布パンツを使うことが多いそうです。パッドも、見た目ではちょっとわからない。コンパクトに売られているし、形的にも生理用品との区別がつかない感じで戸惑いました。店員さんに英語で「大人用オムツはどこですか?」と尋ねたりしました。

介護用品の店(bstaendig)もあります。

その他

【石畳について】
ヨーロッパはどこもそうですがウィーンにも古い石畳がたくさん残っています。情緒ある凸凹の石畳は車椅子の天敵。それでも、ウィーンの中心街の歩道は部分的に平らに舗装されていることが多く、平らな道をちゃんと選べばわりと大丈夫です。ただ、シュテファン大聖堂やモーツアルトハウスの周り、細い小道などは全て石畳なので、かなり厳しかったです…。小さい車輪のついたリクライニング車椅子だったら身動きがとれなかったかもと思います。もちろん、新しく整備された道はとても快適で、ケルントナー通りなどはどれだけ歩いても平気でした。

【公衆トイレについて】
ウィーンはバリアフリーが進んでいますが、これだけは不便でした。トイレマップを手にめぐってみたのですが、簡単に使える公衆トイレはひとつも見つけられませんでした。いわゆる公衆トイレにはほぼ鍵がかかっているからです。誰が鍵をもっているのか、探し回ってもみつかりません。ユーロキーというシステムがあって、予め申し込んでおけば使えるということでしたが、結局、使えませんでした。観光施設のトイレも体のサイズに合わないためか使いづらいことが多かったです。

【薬について】
医師から処方された薬を持っていく場合、薬の名前と効能を一覧にして(英語かドイツ語で)持っていくと、いざというとき安心です。ウィーンではなかったですが、よその国では大量の薬を怪しまれて「これは何だ」と言われたことがありました。

ウィーンでの車椅子街歩きについて

一言でいうと、ウィーンはすばらしくバリアフリーな街です。人が優しい、のももちろんあるでしょうけれども、それよりも「車椅子が普通」なんです。車椅子なんてみんなもう慣れているし、普通。だから困っているとすぐに誰かが手を差し出してくれるし、声をかけてくれます。

また、日本では介護が必要な人をみると「まあお気の毒に」という目で見られることがあります。それはいたわりの気持ちなのでしょうけれども、同情は時に見下ろすことにつながります。ウィーンの人たちは、そうではなくて「おう、がんばれよ!」と手を振ってくれるんです。私が苦労していたら、「すごいね、よくやってるよアンタ!」と褒めて、励まし、応援してくれるんです。同情して見下ろすのではなく、笑顔で一緒に車椅子を持ち上げ、段差を乗り越えてくれる。その笑顔は日本では経験したことのない、とても嬉しいものでした。

お役立ちリンク

バリアフリー情報

オーストリア航空バリアフリー情報

ウィーン観光情報サイト・・・観光局のインフォメーションです

バリアフリーの宿泊サイト