フィンランド

カウニスパーの丘でそり遊び

サーリセルカ3日目。
雪遊びをする。
生まれも育ちも関西な私が
 「雪遊びなんてこんな時しかできない!」
と言い張ったからだ。
町のスーパーで遊び道具を買った。
薄っぺらいプラスチック板を2枚。
私たちの橇
これ、何だと思いますか?
まな板?
ラケット?
正解は、橇です。
ヒップソリとでもいうのでしょうか。
水色の「まな板」型が私ので
ピンクの「ラケット」が先輩の橇。
本当はもっと大きな橇が欲しかった。
事前に調べたら
 「橇はそのへんにたくさん落ちており、誰が使ってもいい」
とネットに書かれていたし、ホテルの人にも同じことを言われた。
なのにどこにも落ちてない。
 「1ユーロで借りられる」
って噂も聞いたけど見つからない。
だからスーパーでいちばん安い橇を買ったのだ。
4ユーロくらいだったかな。
安物ながらも橇をゲットして向かったのは、カウニスパーの丘。
町からバスで10分ほどのスキー場だ。
ここには『橇専用コース』がある。
全長なんと1200メートル!
長距離を橇で一気にすべり降りていく。
遊んでいるのは、主に子供たちとその親だ。
橇コース
怖いもの知らずの子供たちはとんでもないスピードをだしてくる。
橇というよりボブスレー。
5才で立派な暴走族。
ぶつかる物もないから良いようなものの。
ここで使われている橇は一様にボートみたいな形をしていた。

(参考イメージ。)
それに引きかえ私たちのは、
スーパーで買った薄っぺらい『まな板』と『ラケット』。
なんか恥ずかしい。
しかも、滑らない。
両足で
よいしょ!
よいしょ!
と漕げばなんとか進むが、やたらとくたびれるだけだった。
ところが、後半。
突然。
大きな下りをすべりはじめたとたん、エラいことになってしまった!
私の『まな板』が信じられない勢いで走りだしたのだ。
幼児用の板切れ橇のくせに
 「ぎゃああああ!
  止まらないいいいい!」
ちょっと怖いようなスピードだ。
コケたら骨の1本や2本は折れるかもしれない。
だけど、なんてワクワクする速さだろう!
ゴール地点にネットが張られているのが見えても
橇はまだスピードを上げ続けている。
 「うわあ、突っ込むー!」
両足をふんばってブレーキをかける。
雪煙がもうもうとまいあがり視界を遮った。
体が横倒しになり、そのまま転がるように滑っていった。
ゴール手前でしゃべっていた家族連れがあわてて逃げていき、
私は危機一髪、ネット手前で停止した。
 「うっわ、楽しいーーー!」
起き上がりつつ振り返ったら。
先輩がいない。
どこを見渡してもいない。
・・・しまったー!
置いてきてしもたーーー!
遭難してたらどうしよーー!
それでも、しばらくすると先輩は
ピンクのラケット橇を片手にとぼとぼ歩いて斜面を降りてきた。
あれはもう
 『ゼッタイに滑らない橇』
として受験生に売りだしてもいいかもしれない。
さて、この丘「カウニスパー」には「美しい」という意味がある。
雪景色
この日は晴れて絶好調に美しかった。
青と白のコントラスト。
まぶしい太陽がキラキラ光る。
雪は、巨大な結晶のまま積もっていた。
まるで芝生だ。
雪の芝生みたい
丘の上にはレストランと土産物屋がある。
カウニスパーの小屋
そして、素晴らしい展望がある。
あの向こうに北極が
空が広かった。
叫び出したいくらい空が広かった。
世界が広かった。
雪原のむこうを指した矢印には
 「北極」
って書いてあった。
私たちはふだん、小さな小さな世界で生きている。
小さな小さな世界で働き、眠り、泣いたり笑ったりしながら暮らしている。
そして深呼吸したくなると旅にでる。
大きな空を見るために。
地球の丸さ見るために。
私の部屋は小さいけれど
ほんとうは
大空こそが屋根であり
大地の上で眠っているのだと感じるために。
・・・そしてまた、もとの小さな世界へ帰っていく。
泣いたり笑ったりしながら暮らすために。
雪景色2
その夜、先輩が・・・
職場では、尊敬すべきワザを持ち
誰よりもバリバリ働いてる、かっこいい先輩が
ピンクラケットの橇を振り回しながら
 「コートでは~♪♪」
『エースを狙え』をノリノリで熱唱していたなんて、内緒だ。

カウニスパーの丘でそり遊び” に2件のコメントがあります

  1. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    感想を書きたいんだけれど、
    何をどう書いていいものやら。
    ウユニといいカウニスパーといい
    世界には想像もつかない景色があるんですね。
    雪の芝生、こんな光景初めて見ました。

  2. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    >みわさん
    はい、世界にはもっともっともっといろんな絶景があるのだと思います。
    雪の芝生写真はマクロモードで写したのですが、肉眼でもかなり綺麗でした。
    でも日本でも北国へ行けばきっとたくさん綺麗な雪景色があるのだと思いますよ。

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