萩の町から秋芳洞いきバスに乗る。
乗客は私ひとり。
運転手さんがすごく親切に、秋芳洞よりひとつ手前でおりると観光に便利なことを教えてくれた。
バスは赤い瓦の町を抜け田舎道をとおって山道へ入る。
野越え山越え。
1時間。
森にふさがれ鬱蒼としたた視界がパッ!とひらけた。
野原だ。
青空の下、緑の野原がどこまでも広がっている。
青い空と。
緑の大地。
北海道みたい!
って、ごめん、広いのは北海道の専売特許だと思ってたから。
本州にもあるんだなあ、こういう土地が。
展望台のそばでバスを降りる。
展望台には団体客がうじゃうじゃいたので、野原を歩くことにした。
「あらま-歩いていきはるよ、あの人」
「この暑いのに!」
「もの好きやなあ」
背後からおばちゃんたちの呟きが聞こえてきたけど無視。
秋吉台と北海道の景色との一番の違いは起伏が激しいこと。
だだっ広い野原というより、草におおわれた山波なのだ。
よく見ると道がある。
丘をのぼろう。
野道を行こう。
歩いていこう。
自分の足で。
ざわざわと風に揺れる草むら。
まぶしい太陽。
なんだか懐かしい。
ガラパゴスの風景を思い出した。
2年前、南米旅行の最後に歩いたガラパゴスの道。
あの頃とはすっかり状況が変わり、私はもう長旅には出られない。
次にパスポートを使うのはいつになることか。
次にあんな旅ができるのは何十年先になることか!
・・・だけど道は途切れていない。
ガラパゴスの道はちゃんとここに通じていた。
私の目の前にずうっとのびて、空までつづいていた。
人生いろいろ・・・いろいろあるけど!
私は道を見つけるだろう。
いつかどこかに続く道。
たくさん迷子になりながら。
丘の上の木陰でひとやすみすることにした。
リュックを投げ出し、靴も靴下もほっぽりだして、
野原にごろんと横になる。
大丈夫。
みわたす限り誰もいない。
草の海がどこまでも波打っているだけ。
大の字に寝転がって目をつぶる。
風が足指あいだを通りぬけていく。
草が青く香っている。
すぐそばの草むらで鳥がさえずっている。
木の葉がさやさや囁いてる。
雲が流れていく。
目をあけると、すぐそこが空だった。
なんて気持ちがいいんだろう。
心地よく昼寝しててたらアリにくわれて目が覚めた。
痒い。
「今、アリにくわれた!」
と妹にLINEで送ったら
「くわれたら食い返せ!」
とかえってきた。
立ち上がって靴と靴下をはいて、元きた道を歩いて戻ると、団体のおじいちゃんたちが
「カルスト台地」
がわからなくなって
「カストル台地」か
「カストロ台地」か
「カステラ台地」か
どれが本当かで揉めていた。
— 弾丸・山口県 —
弾丸!萩と秋芳洞の旅(3) 秋吉台の空
2013年7月27日