タイ・たった1日だけの旅

たった1日だけの旅(3)「あっちのほう」へ

2月19日、AM11時。
私は錆だらけの列車でファランポーン駅に到着した。
ファランポーン駅
まずは、宿を目指そう。
そこそこの安宿をネットで予約済みなのだ。
場所は、シー・プラヤ桟橋の近く。
徒歩15分の距離。
・・・で。
どっち方向に15分なんだろう?
地図をもっていないのでぜんぜんわからない。
駅の観光案内所で「地図ください」っていったら
 「50バーツ(約150円)」
っていわれたのであきらめた。
 「シー・プラヤはあっちのほう」
と、ざっくりした案内だけタダだった。
とにかく「あっちのほう」にむかって歩き出す。
真昼のバンコクは冬でも暑い。
太陽ぎらぎら。
排気ガスむんむん。
じっとり汗をかく暑さ。
背中のバックパックがどんより重い。
それでも歩き出して2分で
 「おねーさん、どこいくの?」
声をかけられた。
・・・シー・プラヤ桟橋だよ。
 「道案内してあげようか?」
そりゃどうも。
 「歩くのはちょっと、遠いと思うよ」
どれくらいかかる?
 「1時間くらいかな」
へえー遠いねえ。
 「そうだよ、だからトゥクトゥクに乗ったほうがいいよ。
  あ、偶然なんだけど、ぼくトゥクトゥクの運転手なんだ。」
なにが偶然だよ。
乗せたいから声かけてきたんだろ。
ぼったくりたいから15分の距離を1時間とかいうんだろ。
ついでに土産物屋につれていくんだろ。
ごめん、知ってるから。
バンコクの典型的トゥクトゥク運転手を振り切って、「あっちのほう」へひたすら歩き、予約した宿に到着したのは駅を出てちょうど15分後のことだった。