ペルー

カッコいいコンドルを目指して

南米ペルー。
プーノという町に着いて、宿の付近を散策していたときのことだ。
同じ宿のN尾さんが小さな看板を見つけた。
 『El Mirador(展望台) 700m』
展望台。
いい響きじゃないか。
プーノはティティカカ湖沿いの町だから、きっとすばらしい景色が見られるに違いない。
即座に
 「行ってみよう!」
ということになった。
 「700mなら、すぐそこだ!」
・・・すぐ、そこ。
そう、思ったのに。
とんでもなかった。
この700mは平地じゃなかった。
700のうち200が上り坂。
あとの500は、なんと階段だったのだ。
果てしなくつづく階段!
これが普通の場所ならまだしも、プーノの標高は3800m。
富士山よりも高い。
下手をすると高山病にかかってしまう。
いちおう高地順応はできているものの、階段をのぼりだしてすぐ息が切れた。
体が重い。
膝がガクガクと笑う。
まわりの景色なんか見てる余裕はぜんぜんなかった。
そんな私を尻目にN尾さんはすたすたとのぼってゆく。
私よりずっと年上だけど、ずっと健脚なのだ。
情けなかった。
悔しかった。
追いつきたかったけど体がキツくてそれどころじゃない。
次の一段をのぼるだけで精一杯だ。
のぼっても。
のぼっても。
また階段。
ようやくのぼりきったかと思ったらまだ上があって
 「もうダメです」
と弱音を吐いた。
私はここまで一度もうしろを振り向かなかった。
背後には青いティティカカ湖がひろがっているのがわかっていたからだ。
どうせなら、頂上ではじめて振り返り、絶景に感動してみたいと思っていた。
でもダメだった。
もうダメだった。
これ以上足が上がらない。
ここまでのぼったんだから、もういいや。
てっぺんじゃないけど、きっとここからでも良い景色が見えるだろう。
振り返りかけたそのとき。
ちょっと先をのぼっていたN尾さんが
 「頂上にはコンドルがあるよ。
  なんかカッコいいなあ」
と言った。
はるかな丘の頂上を仰ぎ見れば、大きなコンドルの像が翼を広げている。
たしかに、カッコいい!
あれを近くで見てみたい!
それで頑張ることにした。
ゆっくりゆっくり。
休み休み。
でもあきらめずにのぼっていった。
カッコいいコンドル君に会うために。
最後のほうはずっと後頭部がピリピリしていたから、やっぱり酸素が足りてなかったんだろう。
それでも、へたばりながらでも。
てっぺんまで上りきった。
 「やったー!」
思わず叫んだ。
ついに頂上!
ついに対面!
カッコいい、コンドル!
プーノのコンドル
・・・・・・。
遠目にはあんなにカッコよく見えたのに。
私はこんなヤツのために頑張ってのぼったのか。
そう思うと笑いが止まらなかった。
ペルーもなかなかやってくれる国であった。
真のご褒美は、標高3987mからの眺め。
ティティカカ湖とプーノの町なみだ。
コンドルの丘より
でもあとでガイドブックを見たら
 『治安の悪い場所なのでタクシーで行くように』
と書いてあった。
そういえば、お巡りさんが要所要所に立ってたわ・・・。
これから行く人、気をつけて。

カッコいいコンドルを目指して” に2件のコメントがあります

  1. SECRET: 0
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    オチがあまりにも素敵すぎて、笑ってしまいました
    お疲れさまでした(^^;;)

  2. SECRET: 0
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    >さとうさきさん
    かなり疲れた山登りでした。
    コンドル君、素敵でしょう?(笑)

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