オーロラは夜に出るものだ。
昼間はやることがない。
仕方がないから寝て過ごそう。
・・・なーんて、もったいないことは、しない。
翌日さっそく『ハスキー・サファリ』に申し込んだ。
犬ぞりツアーだ。
犬ぞり。
そう、ドラマ『南極大陸』でキムラタクヤが乗っていた、あれ。
タロとジロのあれ。
(これは後ろの組のひと)
橇には、2人一組で乗る。
まずは先輩が橇の座席にすわり、
私が運転席に立って「マッシャー(ドライバー)」をやることになった。
なんか緊張する!
スタート前から犬たちは興奮していた。
ワンワンがうがう吠えまくり、騒ぎたて、隣りの犬にじゃれついている。
どの犬も早く走りたくて走りたくて、うずうずしているのだ。
係員がロープをほどくと6頭の犬たちはいっせいに走りだした。
猛烈なスタートダッシュ!
橇から振り落とされそうになり、とっさにブレーキを踏んだら
「なんで!?」
犬たちがもの問いたげな視線を投げかけてきた。
「せっかく走れると思ったのにー」
「俺ら走りたいんですけどー」
それじゃあ、と足をはなすと・・・アクセル全開!
猛ダッシュ!
相当なスピードがでた。
びっくりして横棒にしがみつく。
足元がふわりと宙に浮いたかと思うと、
橇は急な下り坂のジェットコースターを滑りおりていた。
ひゅうううん!
風が顔をなぶっていく。
先輩がのんきな歓声をあげた。
「たのしーい!」
ハンドル操作はいらない。
犬たちが道を知っているから。
私はブレーキの指示のみを伝える。
ロープにつながったブレーキを軽く踏むとスピードを落とし、
両足で思い切り踏むとストップする。
雪原の一本道から、切り絵みたいなモノクロの森へ。
犬たちはまっしぐらに駆けぬけていく。
橇が雪をけたてて疾走した。
犬たちの体温が上昇していくのがわかる。
荒い息づかいが聞こえてくる。
その日は天気が悪かった。
鉛色の空からはらはらと雪が降りかかる。
犬たちの頭にも、橇に立つ私のまつげにも降りかかる。
雪の中、橇が上り坂にさしかかると、私もおりていっしょに橇を押した。
キムラタクヤの台詞を思い出し
「トウトウトウトウ!」
と掛け声をかけてみた。
橇をぐいぐい押しあげるとなんか一瞬だけ、
ちょびっとだけ、
犬さんたちとの一体感を味わえた!
ような気がする!
もう、これは!
この状況は!
歌うしかないだろう!
中島みゆきの『荒野より』を!
ドラマ『南極大陸』の主題歌を!
「♪荒野~より君に告ぐ~
ぼ~くのために~
立ち止まるなぁ~!」
いや、こいつらが立ち止まるわけがない。
犬たちは常にヤル気だった。
爆走してた。
私が全体重でブレーキをかけても引きずられてしまうくらいの勢いだった。
雪は深い。
時にはズボリと雪だまりに沈むこともある。
カーブをはしょろうとして路肩にぶつかる。
雪の壁をガリガリ削る。
それでもおかまいなしに彼らは進みつづける。
雪をけちらし足をあげ、ぐいぐいぐいぐい進んで行く。
前へ!
前へ!
前へ!
彼らの辞書に「バック」という文字はない。
「俺たちは過去なんか振り返らないぜ!」
・・・と。
そのとき。
先輩は目撃した。
一頭の犬のお尻の穴から、丸いものがポロポロとこぼれてくるのを。
私も見た。
黒く丸いものがいくつか風にとばされ、橇をぎりぎりにかすめていくのを。
「こいつ走りながらウンコしたーーー!」
ちょっと考えてもみてほしい。
飼い犬のお散歩を。
健康なら犬ならぜったいに立ち止まってウンコをするものだ。
もちろん人間はどんな職人だって「トイレしながら仕事」なんて無理だろう(たぶん)。
それを
「ウンコしながらでも走ってみせるぜ!」
と見事にやってのけるハスキー犬!
走る筋肉とお尻の筋肉を同時に使えるワザをもっているなんて!
彼らはプロフェッショナルであると思った。
(プロフェッショナルのお尻)
隙をみてマスクとゴーグルを付けたけれど
あっという間にぐちゃぐちゃになってしまった。
だって、笑いまくっていたから。
橇のスピードが楽しすぎて
犬たちの走りっぷりが可愛らしすぎて
乗っているあいだじゅう笑いが止まらなかったから。
犬ぞり最高!
ジェットコースターの何倍もおもしろい!
— フィンランド —
犬ぞり最高!(前編)
2012年2月28日
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犬も可能なんですねー!(その話か!)
馬は走りながらするので、そんなに不思議じゃなかったんですが、飼い犬を考えると本当に驚愕ですよね。
丁度アラスカのユーコンでの犬ぞりレースのテレビ番組を見たばかりだったので
臨場感がものすごかったです。
犬好きとしては一度経験してみたい!
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す、すごい!
だださんの文章から猛スピードと迫力が伝わってきました。
早いの怖いけど、人生で一度くらいは雪に思いっきりぶつかりながら疾走してみたいと思ってしまいました。
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振り返ってる犬の写真が最高。ほんとに「なんで!?」って言ってる。
親が一時期アラスカ駐在で休暇には遊びに行ったけど、犬ぞりに乗ったことは一度もなかった。
乗ればよかった、と今すごく後悔してます。
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ううっ、乗りたい!
犬と一体になりたい!
そして、プロフェッショナルな瞬間に立ち会いたい!
だださんは、いつも人と同じ事をしても
人の数倍の楽しみを味わっていますよね♪
ブラボーです。
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大だけじゃなくて小もしますよね、彼ら。
自分のブログには書きませんでしたが、風に乗って飛んでくるんじゃないかと、実は冷や冷やしました。
って、人のコメント欄で何書いてるんだ私(笑)
だださんの文章を読んで、楽しかった自分の旅の思い出もむくむくと蘇りました。
また行きたいなぁ。
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>aiaiさん
そうかーウマ科は走り糞も得意なんですね!
さすが走りのプロ!
一度は経験する価値あると思いますよ。
ほんっと楽しいです。
>ささサン
楽しんで頂けてよかったです。
大袈裟に怖がっていましたが単に私がビビリなだけです(笑)
気持ちいいですよー!
>luntaさん
おおー、アラスカですか。いいですね!
次のチャンスには是非のってみてください。
アラスカの犬さんもきっと振り返ってくれると思います!
>わさびさん
初めまして!
私は多分書き方が大袈裟なんだと思います(笑)。
誰が乗ってもあれは楽しいですよー!
プロフェッショナルな瞬間、笑いが止まりませんよ。
>mayuさん
小は、前の橇の犬さんがしまくってましたねー。
黄色いマークを雪に点々と残しておりました。
あっちのほうが飛びそうで危険ですね!
私もまた、行きたいです。
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はしょろう・・・走る?とおもいましたが
ショートカットの端折るですね(^^;;)
日本語って難しい
馬は聞きますよね
馬車道危険って(^^;;)
車が少なくて馬車の時代はいろいろ道が大変なことになってたとか
今でも、皇室結婚式とかのパレードはいろいろ気を使うようなことをどこかで見たような・・・・?
でも犬ぞり、体験してみたいです
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>さとうさきさん
ああ、はしょる・・・って今はあんまり使わないんですかねー(笑)。
漢字で書いたことなかったので平仮名にしちゃいました。すみません。
馬さんは、尻尾の下のところに袋みたいなのをつけて受けてたりしますよね。
結婚式でやられちゃったらまわりが大変ですね。
そういえばゾウさんも、歩きながらやらかしていた気がします。