ブダペストは、石の町だった。
硬くてまっすぐで
直線の石でできた町だった。
田舎と違い、都会の人はみんなクールだ。
旅人をあんまりかまってくれない。
観光案内所の人と
郵便局の人と
宿と食堂の人としか喋らないで、一日が終わった。
鎖橋のちかくで
ハンドメイドのレースを売っているおばあちゃんがいた。
「手作り!手作り!
手作りのレースだよ!
私が作ったんだ。 素敵でしょう?」
道ゆく人に呼びかけて
朝から晩まで立っていた。
雨降りの日も立っていた。
風の夜でも立っていた。
だけど、そこは大通りから1本はずれていたので
あんまり売れ行きが良さそうには見えなかった。
おばあちゃんの名前はコッティという。
子供が成人して時間ができたから
生活の足しに作ってるのと言った。
素敵な刺繍ですねっていうと
すごく嬉しそうに、何枚も何枚もみせてくれた。
レースのテーブルクロスを買ったのは
本当に素敵なものだったから、だけじゃなくて
コッティとおしゃべりをしたかったからかもしれない。
石と直線でつくられた、冷たい雨のふる町で
彼女の笑顔を見たかったからかもしれない。
私はこのとき、都会の雨にさらされてかなり冷え切っていたから。
コッティおばちゃんのテーブルクロスは母への土産となった。
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— ハンガリー —
石と直線の町で
2010年11月25日
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そう言うことってあるね…。
町を歩いているのに 誰とも話さない日。 話す機会の作れないこと。
先日書いた レジでの無言話、たかがレジですが
こちらから「そのバッグ(財布とか)素敵ですね、手作りでしょ?」と言うと クールだったお客の
顔が一瞬にして和らぐんですよ。
そして 帰るときは笑顔になって じゃぁね とか
アリガトウ~と去って行きます。
たぶん それで終わりですが…私も暖かい。
ヒトって きっとこう言う生き物なんだなと…。
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>霧のまちさん
旅にでて、ほとんど誰とも話さないなんて、
ヨーロッパ以外ではありえないことだったんですけどね。
レジで世間話・・・日常ではしたことないかもしれません。
考えてみればすごく機械的に生活してるんですね。
ありがとう。いい言葉ですね。