「戻らなければならない。
人間は昔に戻り、自然に戻るべきなんだ。」
ルーマニアでよく耳にした言葉だ。
ルーマニアで世話になったユゲンさんはある夜
おしいワインを飲みながら語った。
「かつて僕たちは畑で野菜をつくり、小さな店でそれを買った。
だが今はなんでもスーパーで売っている。
馬車が車に替わり
電気がとおって便利になったが
人々とのつながりは薄くなった。
自然は破壊されるいっぽうだ。
だから僕らは、今こそ文明をすてて
昔へ戻らなければならないんだ。」
ああ。
そう思う。
本当にそう思う。
「戻らなければならない。」
だがその一方で
私はこんな言葉を聞いたことがある。
「進まなければならない。」
それはエチオピアでのことだ。
ラリベラの村はずれに住む青年は誇らしげにこう語った。
「去年、この村にやっと電気が通ったんだ。
今まで1日2,3時間しか使えなかった電気が
24時間いつでも使えるんだよ!
日本ではそんなの普通かもしれないけど
僕らにとっては凄いことなんだよ。
日本のNPOが来てくれたから、いつかは水道も通るだろう。
半年後には道路もきれいに舗装される。
大学だってできるんだ!」
青年の目は期待で輝いていた。
・・・でも、急激な変化は、住人にとってどうなの?
「ものすごく助かるよ。
人間の、文明の暮らしができる。
すばらしいことだよ。
僕らはもっともっと進まなくてはならない。
そのために僕は今、勉強をしているんだ」
進みすぎた文明は戻ろうとし
追いつかない文明は進もうとする。
適度なところで留まることなんてできないのかもしれない。
ヨーロッパの観光地にはときどきベロタクシーが走っていた。
自転車タクシーのことだ。
排気ガスを出さない「エコ」な乗り物の最先端だが
あれはつまり
東南アジアのシクローとかサイクルリキシャーのことである。
「金がたまったらオートリキシャーに!」
というのがサイクル運転手たちの夢なのに。
皮肉なものである。
世界は広く。
人間は多く。
かくもこの世は難しい。
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— ルーマニア —
進む、戻る
2010年11月19日
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そう…だから 環境サミットなど 難しいのですよね。途上国と先進国の言い分が全く違う…。
でも、そう言ってる内に 地球はどんどん汚染・破壊されて行くのだ。
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>霧のまちさん
そうなんですよねー。
科学は進歩しても人間は進歩しないしね。
新兵器の開発とかやめてエコな研究に集中すればいいのになって思います。