中東にも春がきて
ジェラシュ遺跡は花盛りだった。
アザミやヒナゲシやキクの仲間が色とりどりに咲きみだれ
崩れた神殿を飾っていた。
私は高い入場料を払っておきながら
ナントカ式の柱より
花を眺めてばかりいた。
野には小鳥がさえずって
ツバメがすいすい飛んでいた。
・・・山のツバメは、今年も同じところに巣をかけただろうか。
遠くはなれた日本のツバメと
その巣の下で忙しく働いているであろう元同僚を思った。

（ジェラシュ遺跡/ヨルダン）
午後はずっと本を読んだり
同じ宿の人たちと話したりして過ごした。
　「旅も週休２日だよ」
ある長期旅行者が言った。
　「旅人は観光するのが仕事。
　　仕事はたまには休まなきゃ」
観光が仕事だとは思わないけど
なるほど、たしかに休みは必要だ。
毎日まいにち移動と観光で突っ走ってきたから。
夜は五ヶ国の旅人と集ってご飯を食べにいった。
いろんな人がいて
いろんな旅がある。
いろんな価値感があって
大切なものはそれぞれに違う。
みんなに流されないように。
ひとに流されないように。
私は私の旅でいい。
私は私の旅がいい。