来た、来た。
ついに来たよ。
あいつが。
ゲーリーが。
下痢が。
原因ははっきりしている。
昨日、「飲め」と言われて断れなかったバナナビールだ。
このあたりにはコーヒー農園とバナナ農園がたくさんある。
「作りたてを飲ませてやろう」
と誘われて出てきたものが、
長年ハエと生活を共にしてきたらしきコップになみなみと注がれた泥水色の液体であった。
表面には籾柄みたいな滓がいっぱい浮いている。
善意の笑みを満面にうかべながら差し出されるとどうにも断れない。
ひとくちだけ飲んだら、バナナの香りが口いっぱいに広がった。
すっぱい味がした。
善意の笑みを浮かべたおっちゃんが言った。
「あ、ごめん、それまだ作りかけだった」
で。
明くる朝には下痢である。
旅に下痢はつきものだ。
こいつを克服しなければ旅とはいえない。
ゲーリーは旅の友である。
…ちょと言い過ぎた。
幸いにも今はまだ嘔吐もないし、動けるし、食べられるし、薬ももってる。
次の移動を考えていたのだが
少しのあいだこのYMCAでお世話になることにしよう。
— タンザニア —
来た
2010年3月12日