今年で最後

私と母の一発芸、2人バイオリン。左手を私が、右手を母が担当して一挺のバイオリンを2人で弾く。もともとはリハビリから生まれた冗談みたいな演奏方法だが、
「コンサートに出演しよう!」
と目標を掲げて練習してきた。その結果、子供たち中心のユース・オーケストラのコンサートに、毎年参加することができた。

2016年はシベリウスの『祝祭アンダンテ』。短いが本当に美しく、今でも大好きな曲だ。
2017年はヴィヴァルディ。子猫が飛び跳ねるようなイキのいい曲だった。
2018年はグリーン・スリーブスと、バッハのコンツェルト。モーツァルトも弾こうとしたがどうしても母が楽譜を読めなくて挫折した。

出演する子供たちの成長にあわせて曲の難度も上がっている。今年は、チャイコフスキーの『弦楽セレナーデ』だ。去年の秋からずーっと練習してるのにまだ弾けない。1・3・4楽章だけを弾こうということになった。第2楽章は難しすぎて指がつったのでパスしちゃおう。

本番まで、あと1ヶ月半。なんとか子供たちの迷惑にならないよう弾けるようになろうと、私たちは試行錯誤していた。
・・・そんなとき。
「今年で最後にしようと思うの」
ユースオーケストラを仕切っている先生が言った。かつては母と2人で分担していたユースの仕事を、母が倒れたあと一人で引き受けてくれていた。だがそれも限界だという。
「私も病気になっちゃったし、母の介護もあるし、子供の数も減っちゃったし、なにしろお金がもう足りないのよ
少子高齢化の波がここにも押し寄せてきたわけだ。寂しいがどうしようもない。これまで頑張ってくださって本当にありがとうございます。
「そっかあ、今年で最後かあ」
母はつぶやいた。
「じゃあ、もっと上手に弾けるようにならないとね!」

今年はポスター作ってくれる人が見つからなくて私が5分くらいで作った…ご近所の方みにきてくださいませ。

弦楽セレナーデはきれいな曲だ。難しいけど弾き甲斐がある。4楽章のラストは大いに盛り上がって終わるから、めいっぱい「弾ききった感」を感じられるに違いない。

忙しいけど。
しんどいけれど。
頑張って弾こう。
これで最後だから。
楽しもう。
私たち2人バイオリンが、子供たちと一緒に弾くチャイコフスキーを。
さあ、また・・・練習だ。

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