バラエティ番組における「在宅介護」の映し方

昨日、『爆報!THEフライデー』という番組で在宅介護をとりあげているのを見た。「あの人は今」みたいなバラエティ番組で、内容は
「46歳・元CM女王が介護生活」
というものだった。

私は初めて見たんだけど、シリーズものらしい。これまでの内容はざっとこんな感じ。

・W介護(義母と義父)
・幼い娘が2人いる
・育児、家事、介護すべてをこなす『スーパー介護ママ』
・娘をおんぶしながら朝食に14品のおかずを作るが自分は立ったまま食事
・常に笑顔。ポジティブな性格と独自のアイデアでがんばっている

シリーズ4回目の今回、義母は他界し、義父ひとりの介護となっていた。とはいえ義父は夜中に叫ぶなど認知症が進行している様子。

まず取り上げられたのが「お金の問題」だ。
これはどこの家でも深刻だろう。うちも深刻だ。

『義父の介護費用が1ヶ月約10万円』
うっわ、高っ!
たしかにこれはきっついわ。どんなサービスを使ってるの興味がでてきた。(ちなみに我が家はフルオムツに週4デイと福祉用具あわせて月6万くらい)

だが介護サービスをどんなふうに使っているかについては全く言及がない。番組で問題にされたのは金額のことだけだった。
『制度が変わり、負担額が増えて3割になった』
『そのため介護費用が5万弱から7万にあがった』
えっ、ちょっと待って! テロップが一瞬で消えちゃったから、まるで介護保険サービスの全てが「3割負担に値上げ」されたみたいに見えるけど、そうじゃない、違うねんで!

3割負担になったのは一定の収入がある人のみ。つまりこのお家にはそれなりの収入が認められるということなのだ。世帯分離とかどうなんやろ。(うちみたいな貧乏人は1割のままですよ。)

一方で「介護にはお金がかかる」というのはどういうことか、介護サービスの費用とはべつにかかる「見えにくいお金」についても言及していた。これはとっても良いことだと思う。

たとえば光熱費。
『暖房費がかさむ。光熱費10万円』
ああ、これはわかるわー。寒がるし、暑がるし。節約しようがない…。
それから家賃。
『介護のために広い家を借りたので、家賃が高額になる』
都会は大変やなあ。
『義父一人を家において働きに出ることは難しい』
小さい子供さんもいてはるしなあ。
『4ヶ月入院したら治療費75万円』
うえええええ! 高いなー! 高額医療費の自己負担限度額とかどうなってんのー!

多々問題をかかえているが
『数々のアイデアで苦難と向き合っている』
とナレーションが入る。
さあ、ここからが見所だ。
『驚きの介護テクニックを紹介』
おお、期待大!

『その1:暖かい食事で体をあたため脳の血流をUPし、認知症改善をねらう』
・・・へー。

『その2:コーヒー飲んでカフェインで血流アップ』
・・・ほーん。

『その3:廊下に手すりを設置してトイレへ一人で行けるように』
・・・ふつう。

『その4:「ボタンやポケットは髪の毛などが引っかかり転倒の原因。介護時はTシャツやセーターを着用』
・・・うん、これもう話題にも上らんから逆に新鮮かもしれない。

介護にまったく無縁の人たちにとっては、こういうのが
「数々のアイデアと独自の介護術」
になるのかと、ある意味、目からウロコだった。バラエティ番組ってすごい。

いや。
本格的にすごくなるのはこの先なのだ。
これぞ介護!
スーパー介護ママ!

「子育てもけして手を抜かない」
・・・頑張るなあ。すごいなあ。
「家事には手を抜かない」
・・・ちょっとくらい抜いても良くない?
「睡眠時間は4時間」
・・・もっと寝ようよ、危険だよ!
「介護、家事、子育てにすべてを尽くす!」
死んでまうやろおおお!

介護において、完璧主義ほど怖いものはないと、私は思うのです。人って頑張り過ぎたらポキンて折れちゃうものだから。介護者がポキンってなったら被害は自分だけで済まないから怖いのです。

こんなに頑張れる理由は? ときかれてスーパー介護ママは答える。
「祖父母を4年間介護した後悔があり、今度は後悔したくない」
・・・後悔したくない。
これは実際に介護者からよく聞くけれど、つくづく重い言葉だなあと思う。

どれだけやれば後悔しないんだろう?
何をどこまで犠牲にすれば、後悔しないんだろう?
介護が終わったとき、犠牲にしてしまったことを後悔するんじゃないだろうか?
何ひとつ後悔しない介護なんて本当に存在するのだろうか?
やりきった感と後悔しないこととはまた別なんじゃないかな?

夫のこともチラッと出てきた。
実母が病気になり、その通院に同行するあいだ、義父の世話を夫にまかせる、というくだり。
『夫は自宅での仕事を増やし、介護に協力』
介護に協力? 協力って、おかしくない?
自分の父親のことなのに他人事すぎない?
まあ、かなりきっちり分業しているお家みたいだ。お金を稼ぐことは、とても大事だから。

実母の病気で、スーパー介護ママはまたW介護をすることになった。病院への付き添いの他、実家の家事や草むしりなどもしなくてはいけない。実家までは車で片道2時間かかるためかなり大変そうだが、
『運転しながら大声で歌うことがストレス解消法』
わかる!
これわかる!
一人きりの時間って大事ー!

そうこうするうちに義父の状態はさらに悪化していく。認知症だけではなく、インフルエンザでしばらく入院していたため足が動かなくなってしまったのだ。
『寝たきり状態に!』
入院て怖いよねほんと。

そしてついに、こんな言葉がデカデカと画面に踊った。

『寝たきりの介護は、素人が安易に手をだすと地獄を見る』

怖い!
在宅介護って、超怖い!
なんかホラー!

『寝たきり介護の過酷な現実!』
『最低でも1時間に一回、体位交換をする』
『誤嚥するので、ちゃんと飲み込んだか確認が必要』
『なにをするにも介護が必要』
『睡眠時間がさらに削られる』

ああもう、ほんとお疲れ様です…。
訪問サービスはどれくらい入ってんのかな? 一度も言及されてないから何も使ってみたいに見えるが、そんなはずないだろうなあ。

専門家も出てきて言う。
「自宅介護は24時間気が休まらない」
「家族にしわよせが」
家族って、介護者だけじゃないよ。子供も入るからね?

笑顔と独自のアイデアでスーパー頑張ってきた介護ママも、とうとう
『もう私ひとりが頑張ればいいっていう問題じゃない』
と悩み始める。
在宅介護か? 施設入所か? という選択を迫られたのだ。

施設はお金がかかる。
在宅は過酷すぎる。
みんな悩むよね。
お安い特養なんて、そう簡単には入れないもんね。

彼女が出した結論は、在宅介護。
『寝たきり介護に本気で取り組む!』
頑張るなあ…。
子供さんもいるのに…。
私ならきっとあきらめちゃうなあ…。
ほんとにえらいと思う。
尊敬する。
でも、不安になる。
だって、どうして在宅介護を選んだか?という問いの答えがこれだったから。
「亡くなった義母と約束したので。『夫をよろしくお願いします』って言われたので」
それ、呪いだよ!
介護の呪い!
誰か祓ったげて!!!!!

最後の最後にちょろっとだけ
「高額介護サービス費支給制度」
の話が出た。
やっと出たーー!
番組では一度も、ケアマネの影さえ見られなかった。

茶化すつもりはないのだが、バラエティ番組だからわりと軽い気持ちで見ていた。そういう番組だと思ったから。現実がほんとに厳しいのはある程度、身をもってわかっているつもり。このスーパー介護ママさんはほんとにえらいと思う。真似できる気がしない。

さて、この番組を見た人は、とくに介護を経験したことのない若者は、どう感じるだろうか。画面から伝わってくるメッセージは主に2つだ。
一つは
「介護は地獄!」
在宅介護がいかに大変か、恐ろしいものか。それに加えて、かつてのCM女王が、華やかな芸能界からこんな酷い暮らしに落ちちゃいました、みたいな描き方もあった。

シリーズものだから、他の回ではもっとポジティブに描かれていたのだろうし、介護サービス使ってる場面とか補助制度の話も出たのかもしれない。が、この回だけを見た若者は
「介護って怖い」
「やりたくない」
「親に介護が必要になったら絶対に逃げよう!」
と思うんじゃないかなあ。

もう一つは、
「頑張ってるスーパー介護ママが健気!」
典型的な、そして日本的な、介護美談に仕立ててある。自己犠牲は美しい、家族のために尽くすことは美しい、と。そのために、睡眠を削ったり、家事育児も完璧にこなすことを強調したのだろう。でも、これ真似する人がいたらきっと死ぬ。
「私も後悔したくないから、もっと完璧にやらないといけない、この人みたいに頑張らなくちゃ」
なんて思ったら、追い詰められて介護事故とか介護殺人とか起こりそうである。

バラエティ番組は視聴者を「うわー」っていわせたら勝ちなんだと思う。過激な言葉で感情を煽る商売だ。だから・・・なんだかなあ。せっかく介護をとりあげるのなら「どうやれば介護が楽になるか」も放送してほしいなあ(でもそうすると『好物は誤嚥しない』とか言いだすからやっぱり困る)。

本日の猫写真。

寒いからくっついてる2匹。でも実はあんまりくっつきたくないみたい。

コメント

  1. 私もこの回を見てましたが、同じ事を思いました。
    番組の構成だから何でしょうけど旦那さんやケアマネさんの存在が空気より薄くて、思わずお子さまたちのケアは大丈夫なんだろうかと心配になりました。
    介護も十人十色 それぞれやり方や環境は違うのでしょうけど、あそこまで完璧さを求めなくても~!もっと周りを頼って~!と思っちゃいました。

    • そうなんですよね。
      介護は人それぞれですが、人間の体力には限界があると思うんです…。心配だ~。
      >思わずお子さまたちのケアは大丈夫なんだろうかと心配になりました。
      そのへん何も触れてなかったですね。
      私の経験では子供もやがて介護要員になります(笑)
      おじいちゃんには嬉しいことですけれど、参観日とか運動会とか行けるのかなあって勝手に心配してました。
      まあ、バラエティ番組ですから、演出も過剰なのでしょうね。
      きっと介護保険サービスもつかてる、はず…。

  2. この番組、私も観てましたが…

    スーパー介護ママ、健気に頑張ってるけど、心と身体は大丈夫かなあと思いました。
    すごく大変だと思います。
    介護サービスはどこまで利用されてるんでしょう?
    旦那さんのご両親なのに旦那さんの影が薄いし、
    そこらへんがわからないので、
    少しモヤモヤ。
    旦那さんのお母様の言葉、ほんと呪いにしか聞こえません。
    介護は嫁の仕事じゃないです。

    私は母を介護中ですが、
    すっごくサボってるし、
    こんなに頑張れないし、
    睡眠時間は削れません…f(^_^;

    もっと介護保険制度とか、楽に介護できるコツを教えて欲しかったな、
    と正直思いました。

    • 民法のバラエティ番組ですからとにかくウケればいいのでしょう。
      つまに「介護って大変!」なのが視聴者にウケると考えられていることがこの番組でよくわかりました。

      あんなにも「スーパー介護ママ!」って煽られると、引き下がれなくなり、ますます頑張らなくちゃと追い詰められやしないですかねえ。
      旦那さんも頑張ってるのかもしれませんが全然うつらないし。
      介護保険サービスも、なんだか一回だけ入浴介護って言葉が出てた気がするんですが、それきりですね。
      普通に考えたらショートとか使いまくらないと子供さんのこと何もできない気がします。
      あれだけが真実だとはとても思えないので、演出って怖いです。

      >私は母を介護中ですが、
      すっごくサボってるし、
      こんなに頑張れないし、
      睡眠時間は削れません…f(^_^;

      同じです!
      いかに手をぬくかって、とても大事です(笑)
      睡眠時間を削って自分が倒れたら本当に大変ですもん。
      なるべく楽な介護をしていきましょうね!!

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