ご家族さんの言葉

台風がやってくる。私の住む関西地方を狙い撃ちだ。電車は止まるし店は閉まる、デイサービスもお休みだ。それでも仕事はあるわけで・・・正直、怖いなあと思っていた。ヘルパーは移動が多いから。

今日の訪問は朝から4件。1件目のお宅へ伺ったときはまだ雨もなく穏やかな天気だった。それでも家族さんはしきりに恐縮された。
「ごめんね、こんな天気の日に来てもらって。今日は早めに切り上げて帰ってください」
私は笑いながら笑いながら
「いやいや、このあと3時まで仕事あるんですよー」
つい口を滑らしたら、ご家族さんは真顔になった。
「それはアカンで! あんた、昼からは外に出たらアカン。台風直撃やで、どうなるか!」
ちょっと怖いような口調で、
「いやホンマに、事務所に相談しなさい、絶対に、これは言わなアカンことやで」
何度も何度もそう仰った。本気で心配してもらえたことが嬉しかった。

そうこうすうるうちに雨風がひどくなり、2件の利用者様からキャンセルの連絡があった。
残りは1件。
それはまさに台風の目が直撃する午後からの仕事だった。
そして、掃除の仕事だった。
・・・うーん。
同じ訪問介護でも、身体介護なら利用者さんの命がかかってるから、こちらも命懸けで行こうと思えるが、掃除って、明日でも良くない? これでもし移動中に看板がとんできて頭にぶち当たって死んじゃったら、「掃除機かけるために死ぬんだな私」って思っちゃって、ちょっと報われない。

出勤前に見た不気味な雲

仕事は大事だ。
利用者さんは大事だ。
でもやっぱり自分が大事だ。

だから上司に電話をした。
「あの・・・午後からの仕事なんですが・・・」
言いにくい。すごく言いにくい。こんなことを自分から言い出すなんて私は間違っているのかもしれない。でも、あのご家族さんの言葉が力をくれた。背中を押してくださった。私は思い切って言うことができた。
「予定どおり行かなくちゃダメですか?」
それからいろいろあって、結局、その仕事はキャンセルになった。振替ができなかったことが申し訳ない。

台風は予報ぴったりの時間に我が町を通過していった。うちは庭の木が1本折れたくらいですんだが、収穫直前の田んぼはどうなっただろうか。テレビの向こうからは甚大な被害のニュースが流れてくる。

昼寝してても雨風の音に反応するシシィさん

どうかこれが今年最後の台風となりますように。

コメント

  1. 最大級の警戒をって繰り返し言われてましたし、それは正しい助言で、正しい検討で、正しい判断だったと思います。
    掃除機かけに行く途中で死んだり、重傷負いでもしたら大変です。
    今までも新聞配達の人が流されて亡くなったりしてますし。
    今朝のニュースで、研修に遅刻したくないからと法定速度100キロを175キロでブッ飛ばして速度違反で戒告処分になった女性警官のニュースやってましたが、法の番人が優先順位間違ってどないすんの!?ですよ。
    利用者さんの命と生活をサポートすることに、生き死にまでかけちゃいけません。

    • ありがとうございます。
      さすがに掃除のために命はかけられませんわ…
      林間学校に出かけて山中で孤立した小学校もありました。
      台風は事前にある程度コースもわかっているので、早めに判断しないといけませんよね。
      近頃はJRも前日から運休を決定しているので、助かっている人も多いのではないでしょうか。