利用者さんとマフィンを作ろう

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職場であるデイサービスでのこと。
今日のレクリエーション担当は私である。
利用者さんと一緒にマフィンを作ろう、と先週から考えていた。
ヨーグルトマフィンにしよう。
バターを使わないから胃もたれしないし、材料も安い。

レクは自由参加である。
やるやらないは本人が決める。
それがうちの方針だ。

なので私は希望者を募った。
「今からお菓子を作りまーす!
手伝ってくださる方ーー!?」

・・・しーーん。
希望者ゼロですよ。
誰も手を挙げない。
おかしいなあ。
聞こえなかったのかなあ。

「マフィンですよー焼き菓子作りですよー!
誰か手伝ってくださーーい!」

・・・しーーーん。
やっぱり誰も手を挙げない。
もう泣きそうである。
「利用者さんが読めるように」と大きな字でレシピを書いてきたのに、私ひとりでお菓子作りをしなくちゃいけないのか。そんなの寂しすぎるだろ!

そこに通りかかったのがAさんだ。
「Aさん、いっしょにお菓子作り、やりませんか?」
と尋ねると
「あ、はい」
と二つ返事で引き受けてくださった。女神に見えた。

Aさんは認知症がすすんで近頃は何もかもよくわからなくなっている。
わからないから何でも「ハイ」って言っちゃうのかもしれないけど、「ハイ」って言ったからにはやっていただこう。

というわけで、私はAさんと2人だけでマフィンを作った。
材料を計って。
ハンドミキサーで混ぜて。
型に入れて焼く。
手とり足とりマンツーマンで全部やってもらった。
卵は上手に割ることができた。 すごーい!

焼き上がりが、これだ。

皿を飾る余裕などない

とりあえずちゃんと焼けてホッとした。
他の利用者さんたちも「おいしい」と言ってくださった。
「Aさん、作ってくれてありがとう」
「ごちそうさま」
私もお礼を言った。
「Aさん、ありがとうございました。Aさんが手伝ってくださって本気で助かりました」
Aさんはひどく恥ずかしがって
「いえいえ、そんな、私なんかで」
と恐縮しきりだった。

そのあと日記を書いてもらったら、Aさんは一言「はかる」と書いてくれた。
Aさんは認知症のせいでほとんど字が書けなくなってるのに、見たこともないくらいキレイな字で「はかる」と!
お菓子の材料を「はかる」の意味だろうと思う。
嬉しかった。

デイで散歩にいったら紫陽花がきれいでした

Aさんはあんまり難しいことはできないから、普段は、他の利用者さんの作業を見ているだけ、ということもあるくらいだ。
なのに今日は大活躍だった。
仕事ができる。
誰かの役にたつ
感謝される。
それは素晴らしいことなのだと、Aさんの笑顔を見て思った。

コメント

  1. 今日はその真逆の二乗なことをされてきたので
    なんか涙出てしまいました

    気持ちいい涙で眠れるようにしてくれて
    ありがとう、だださん

    • お返事が遅れてごめんなさい。
      こちママさん、大丈夫ですかか?
      かなりお疲れのご様子ですが…
      たまにはゆっくり休んでくださいね。

  2. ありがとうって言ってもらった時、自分が皆んなの役に立ったんだ、と心から嬉しく思ったでしょう。自分の存在価値は他者との関わり合いでしか確かめられません。
    ありがとうって、私は1日に何回言っているかな?と考えた夜でした。

    • 同じことをしても「ごめんね」より「ありがとう」と返ってきたときのほうが嬉しいものですよね。
      高齢の方は多かれ少なかれ
      「年をとったせいで、こんなこともできなくなってしまった」
      という気持ちを持っておられるので、意識してなるべくたくさん言うようにしています。
      あー、家族にももっと言わなくちゃですね・・・(笑)

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