「かわいそう」は蔑みの第一歩

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先日始まったパラリンピック。
全国的に非常事態宣言が広がる中、複雑な思いはあるけど、やっぱり見てしまう。
オリンピックとはまた別の意味で「すげえ!」と思ってしまう。
ガチガチに車椅子をぶつけあうラグビー、片手で猛スピードをだす競泳、義足のランナー、戦略を駆使するボッチャ。
「めっちゃかっこいい!」
けれどもオリンピックに比べてパラリンピックを放送する番組はだいぶ少ない気がする。
見ている人もやっぱり少ない。

パラリンピックの話題がでたとき、ある人がこう言った。
「痛々しくて見てられないです」
私はもうびっくりしてしまって、言葉がでてこなかった。
意味がわからなかったので辞書で引いてしまったくらいだ。

「痛々しい」はたから見て心が痛むほど、大層かわいそうである。(広辞苑)

可哀想?
なんで?

「だって体が不自由だから」

たしかに歩くことはできないけど、あの選手は、私たちの何百倍も動けてるよ?
世界一を目指してるよ?
必死に夢をおいかけて実現しようとしているよ?
すごいことじゃない。
それのどこが可哀想?

「だって健気じゃない、あんな体になってまで、必死で頑張ってさ。そうやってないと、生きてる価値が見い出せないんじゃないかなあ。気の毒で見てられないよ」

ま、待て待て待て待て!
オリンピック選手が世界一を目指しても誰も可哀想だなんて言わない。
池江璃花子選手が大病をして競技に戻ってきたとき、誰もが祝福しただろう。
健気で可哀想だとか
「必死で頑張ってないと生きてる価値が見い出せないんじゃないか」
なんて誰も思わない。
なぜ、パラの選手はそんなこと言われちゃうんだ?
見た目が違うからか?

・・・などとは、仕事中だったので何も言わなかったけど。
私にはちょっと理解できない世界だった。
でもこの世の中にはそういう考え方をする人が多いのだと改めて思い知った。
だって、この言葉をいったのは、まだ三十才になったばかりの若い人だからだ。
たぶん、親も周りもきっとみんなそう思ってる人たちばかりなんだろう。

たしかにパラアスリートには中途障害者が多いし、進行性の難病をかかえる選手もいる。
壮絶な人生を体験し、今に至る人たちだ。
大変なことだし、乗り越えてこられたことは尊敬する。
でも「可哀想」はなんか違う。

腎臓病のある中学生が、「かわいそう」と言われることについて『無意識の差別』という作文を書いている。

「普通の体じゃなくて大変だね。」と言われているような気がして、自分と健康な人との違いを実感させられる。(中略)同情は、時によっては健康な人とそうでない人達を分ける、いわゆる差別になってしまう」

私の妹は生まれつきの重度障害だから、それはもう数え切れないほど「かわいそう」と言われてきた。
私は子供心にイラッ!としたものだ。
校長先生が
「障害をもつ可哀想なお友達を助けてあげましょう」
と言ったとき、
「私の妹は可哀想じゃありません!」
校長先生に公然と反抗したもんだから、えらい叱られた。
子供の私はうまく伝えられなかったけど、今ならこう言う。

同情は蔑みの第一歩です、と。

かゆみが強くなると痛くなるように。
「可哀想」という言葉は「見下す」の第一歩なのだ。
それは優しい心から始まるのかもしれないが、行き着く先は差別である。
だから、あれだけものすごい競技を行うアスリートに同情するなんて失礼だと私は思う。

サンジも病人です

開会式の特番で増田明美さんがこんなふうなことを言っていた。
「いつかパラリンピックがなくなること、オリンピックとパラリンピックが区別なく一緒に競技できること、それが最も目指すところです」
と。
そうなればいい。
オリンピアンもパラリンピアンも同じようにかっこいい。

コメント

  1. 「あんな風になっちゃったら、おしまいだ」と言う人は、自らが「あんな風」になってしまった時に一番脆い、ということを以前障害学を教えている先生から聞いたことがあります。

    実際、突然自分がそんな状態にになった時、失意の中で生きる人を見てきました。「自分を丸ごと受け入れられない人は他者も受け入れることができないんですよ」とも上記の先生はおっしゃっていて、折に触れてその言葉を思い出します。

    • 障害学!そういう学問があるのですね。
      中途障害は壮絶だと思います。
      母でさえ少しは大変だったので。
      (今は「ちょっと動かないだけじゃないの」とか言うていますが。)
      それを乗り越えて一流アスリートになった方は本当に尊敬します。
      >「自分を丸ごと受け入れられない人は他者も受け入れることができないんですよ」
      なるほど、重みのある言葉ですね。

  2. 私は今回のパラリンピックで車椅子バスケットボールを楽しみにしています。今日はトルコに勝って、とても嬉しいです。障害があるとかないとか関係ないと思います。
    こんなに人を魅了させるプレーは素晴らしいです。

    • トルコ戦みました!
      すごかったですね!
      かなり激しくて一瞬ラグビーかと思いました。
      どきどきしましたが、ほんと魅力的です。

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