真保 裕一: 黄金の島

海外逃亡したヤクザとベトナムの貧しい若者たちが、黄金の島ニッポンを目指す。

宝探しか何かの話かと思ったら日本を目指すボートピープルの話だった。アクションあり、裏切りあり、友情ありで、飽きさせず一気に読ませ、読み応えのある物語だった。

サイゴン、ダナン、ホイアンなど懐かしい街が舞台になっているのも興味深かった。ベトナムの人たちは本当によく働く。早朝からいくつも仕事をかけもちしていたおばちゃんを思い出した。

ただ、出てくる女性たちがみんな、逞しいというより嫌な感じ…。


<ネタバレ>

ヤクザの坂口修二は身内から命をねらわれバンコクへ逃亡したが、追手が迫りさらにベトナムのホーチミン・シティへ逃げた。そこでシクロ乗りの青年チャウとその仲間たちに出会う。

チャウは貧しい漁村に生まれた若者で少しでも金を稼ごうとサイゴンに出てきた。必死に勉強をして英語を覚え、観光客をのせてシクロを走らせる毎日。夢はいつかこの国を抜け出して「冷蔵庫やビデオを持てる国」に渡ることだ。

チャウが属するグループのリーダーはカイ。カイは明晰な頭脳とおそるべき実行力、そして仲間のことを第一に考える信念をもち、「力を合わせて金を稼ごう」とシクロ乗りの若者を組織していた。

サイゴンでも警察に狙われる修二はチャウに匿われるが、やがて彼らに「日本語を教えてほしい」と請われる。チャウたち貧しい若者は日本へ行くことを熱望していた。日本へ行けさえすれば幸せになれると純粋に信じていた。修二は「日本がどんなに情けない国か、それどころか、どこにあるかも知らないくせに!」目を覚ませ、と何度も説くが、かえって彼らの夢を応援するようになる。

ある日、日本への密航船が出ることが分かり、仲間のうちティエップが恋人トゥエン乗り込んだ。だがその船は初めから金を巻き上げることだけが狙いであったらしく、疑いを口にしたティエップは出航の直前に射殺されてしまう。直後、修二は警察に捕らえられる。カイたちのグループも警察に妨害をうけて商売ができずサイゴンを離れた。

やっとのことで釈放された修二のもとにチャウの妹・マイが訪れる。「兄さんを助けて!」故郷へ帰ってきたチャウはボロ舟を修理して日本へ渡るつもりなのだという。「あんな船では沈んでしまう。兄さんは死んでしまう、止めてください」と。

修二はチャウの元へ行く。チャウたちは「まともな密航船がないのなら自分たちの手で漕ぎ出そう」と企んでおり、完全に夢に溺れていた。ボロボロの小舟はあっという間に沈んでしまい、見ていられなくなった修二は「俺が日本へ連れていってやる」と言う。

昔船乗りだった修二は、漁船にGPSや無線を積み込み、周到な用意をする。だが罠にかかり、ハイエナのようにしつこい警官のキエムを殺してしまった。もはや一刻の猶予もならない。彼らはついに海へと漕ぎ出した。

しかし航海は苦難の連続だった。カイは結局のところ修二を信用しておらず、仲間割れになったところで台風に遭い、仲間は何人も死んでしまう。

それでも必死の思い日本の領海にたどりついた。修二の旧友が沖まで迎えにきてくれるはず・・・だったのだが、迎えにきてくれたのは敵の船。修二の命を狙っているヤクザが旧友を脅し、出迎えを装って修二を撃ち殺した。

残ったチャウやカイたちは、俺たちが生きるためだ、と虫の息の修二を引き渡し、自らもヤクザの奴隷となって日本に上陸する。ここまでが本編。

エピソードとして、1年半後、彼らはヤクザのもとを脱走する。カイは最後に修二の仇でもあるヤクザの親玉・砂田と刺し違えて死ぬ。終わり。

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