オヤジの料理(19)鉄火丼

オヤジは魚が嫌いである。
「生臭いから」刺し身もダメ。
「小さな目がなんだか可哀想だから」ちりめんじゃこもダメ。
「骨があるから」焼き魚も煮魚もぜんぜんダメ。
家で秋刀魚を焼くと、私は母とオヤジの2匹ぶんの身をほぐさなくちゃいけない。面倒くさいが、そうしないと2人とも食べられないから。

それくらいお子様口のオヤジだが、最近はちょっとずつ魚も食べるようになってきた。
自分で料理をするようになったせいかもしれない。
昨日、とうとう、魚をつかった料理に挑戦した。

「鉄火丼!」

酢飯もタレも、ぜんぶオヤジが自分でつくったのですよ。すごい!

まあ、実をいうとレシピ本の字が小さすぎてオヤジには読めず、半分くらいは私が
「先にタレをつくって!漬けて! 次は、みりん、お酢、しょうゆ!」
てな具合に指図しておったのですが。

実はオヤジ、このあいだは母を皮膚科につれていってくれた。サンジの薬をとりに動物病院にも行ってくれた。当たり前で簡単なことのように聞こえるかもしれないが、昔のオヤジなら
「俺、道を知らんから無理!」
といって逃げまわっていたことばかりだ。
かつてのオヤジはとんでもなくヘタレで、
「俺、できへん」
「俺、わからん」
「そういうの苦手や」
子供みたいなことばっかり言って、家のことから逃げ回っていた。ところが最近は
「できるかどうかわからんけど、やってみる!」
というようになった。

オヤジの膝はサンジ君のものです。

魚料理にチャレンジすることで、オヤジはまたひとつ成長した。
いささか遅すぎる成長かもしれないけど、70手前になって新しいことに挑戦すること、成長できることは、すごいことだと思う。