せつないシシィ

シシィは必死だった。じれったいような声をあげ、時にはにゃんにゃん鳴き、けんめいに腕をのばし、何度も天にむかって飛び上がりさえした。
・・・あんた何やってるの?
声をかけると
「あのね! 虫! 虫を追っかけてるの!」
嬉しそうに教えてくれた。居間の壁のてっぺん、天井ちかくに小さな虫が止まり、もぞもぞと動いているのが見えた。小さな虫でも、室内外の猫にとってはいいオモチャだ。

粘ること3時間。
とうとう、そのときが来た。
虫が下りてきたのだ。
「にゃにゃにゃにゃにゃーーー!」
シシィは歓喜の声をあげ、とびかかった。爪にひっかかって落ちてきた虫を、軽く叩いたり、ボールのように蹴飛ばしたり、ちょっとくわえてみたりと、いたぶり始めた。残酷だけど仕方がない。これが猫の本能だ。じきにバラバラにされるな・・・と思っていたら、30秒もしないうちに、この顔。

「虫、どっかいった!」

シシィさん、虫に逃げられたみたい。ゴミ箱の隙間かなんかに隠れたのだろう。3時間も粘って待ってたのにね…すごくせつない顔してた。