寛容な猫たち

施設に入所中の妹を迎えにいく日、母はいつも同じことを言う。
「今日はゆうこが帰ってくるんだね。わーい!って喜んであげなくっちゃ」
『あげなくっちゃ』に本音があらわれている。

妹は妹だからもちろん可愛いが、恐竜みたいにうるさいのでちょっと疲れる。今日も施設へ迎えにいくと、階段を半分くらいのぼりかけたところでもう妹の雄叫びが聞こえてきてげんなりした。
「ギャアアアアアーーーー!」
知らない人が聞いたら110番するべきか迷うレベル。入所者は約50人でそりゃあいろいろな人がいるが、中でもうちの妹はダントツでうるさい。追い出されたらどうしよう。

ところがだ。
実の親でさえ
「喜んであげなくっちゃ」
とか言うているのに、一方では
「ゆうこさんお帰りーーーー!」
と素直に大歓迎してくれる連中もいる。

それは、猫たちだ。
サンジはしっぽをピンピン立てて、シシィは走り回って
「ゆうこさん久しぶりー!」
と全身で喜びを表現していた。

そして妹も
「あーんじー(サンジのこと)」
と、とっておきの優しい声で(雄叫びではなくて!)猫たちに話しかけていた。


(妹の腕枕で眠ろうと試みるシシィ。でも妹は痩せすぎで骨っぽいのであまり寝心地がよくないみたい)


(オムツ交換セットを荒らしまくるサンジ。お願いやめて)

猫たちは妹が大好きだ。奴らは障害の有無など気にしない。大声にはビクッと反応するだけですぐに慣れるし、ヨダレの臭いも気にしないし、下痢ボンバーが炸裂しても慌てず騒がず
「ここ落ちてるで、気いつけや」
って冷静に指摘してくれるし、妹がワガママ放題で暴れだしたって
「またこの人なにか言ってるわ」
と華麗にスルーできるのだ。何があろうと単純に、家族の一人が帰ってきたと喜んでいる。

猫たちのほうが私よりずっと寛容だしずっと偉い。私も猫たちを見習って、妹の雄叫びを優しくスルーするできるようにならなくちゃ・・・。